かつて読んだことのない、極北の長編小説! 髙村薫『墳墓記』新潮社 2025年刊 | 「月球儀」&「芭蕉座」  俳句を書くメゾソプラノ山本 掌のブログ

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第四句集『月球儀』
「月球儀」俳句を支柱とした山本 掌の個人誌。

「芭蕉座」は芭蕉「おくのほそ道」を舞台作品とする
うた・語り・作曲・ピアノのユニット。
    



俳句を金子兜太に師事。「海程」同人・現代俳句協会会員。

 

 

 

 

 

 

 

髙村薫『墳墓記』新潮社 2025年刊

 

 

装画:高屋永遠「水面の春」

 

このうす紅の諧調に黄・青・灰色がひそみ、

 

そこに銀の箔押しの表題。

 

ひかりを反射するのか、角度によっても金色に見えて。


(カバーの紙があまり使用されない不思議なきらきら感と色味、とか)

 

書籍として、とてもうつくしい。

 

装幀は新潮社装幀室。

 

 

 

男、70歳を迎え自死できず、

 

いま現在、管につながれ、

 

意識だけが、在る。

 

その意識の塊が、時間・空間を自在に飛び交い、

 

自身のことから、ふっと、老いた定家へ、

 

万葉へ、源氏物語へ、平家物語へ、と。

 

そこは古文となり、

 

現代文と溶けあって行き来する。

 

さらにすごいのは数多くひかれる和歌も、

 

地の文に融合する。

 

散文の中に韻文が何の違和感もなく、在る。

 

そして<意識>、そのものだけで成り立った小説、

 

孤絶の美。

 

鮮烈な初めての読書体験です!

 

 

 

◆帯

 

時空を超え、鮮烈に蘇る古の声、声、声。

 

髙村文学の極限と愉楽がここに。


老いて死に瀕した一人の男が、意識の塊と化して長い仮死の夢を見る。

 

そこに沸き立つのは高らかな万葉びとの声、

 

野辺送りの声、笑い転げる兎や蛙の声、

 

源氏の男君女君の声、都を駆けるつわものたちの声、

 

定家ら歌詠みたちの声、そして名もなき女たちの声――。

 

古文と現代文の自在な往還を試みた独創的文体、渾身の長篇小説。