平野啓一郎『富士山』新潮社 2024年刊
<あり得たかもしれない人生の中で、
なぜ、この人生だったのか?>
印象的なこの帯。
平野啓一郎、10年ぶりの短篇集。
5編とも現代で、コロナ、DV、無差別殺人、癌など
みずからの体験、あるいは起こりうること、
感じたり、考えたり、
その選択いかんによって変わってしまうかもしれない私たち。
そんな疑問をつきつけられしまう・・・
「富士山」 ――結婚を決めた相手のことを、人はどこまで知っているのか。
「息吹」 ――かき氷屋が満席だったという、たったそれだけで、
生きるか死ぬかが決まってしまうのだろうか?
「鏡と自画像」 ――すべてを終らせたいとナイフを手にしたその時、
あの自画像が僕を見つめていた。
「手先が器用」 ――子どもの頃にかけられた、あの一言がなかったら。
「ストレス・リレー」 ――人から人へと感染を繰り返す「ストレス」の連鎖。
それを断ち切った、一人の小さな英雄の物語。