八日はや棚機津女の解かれて
(たなばたつめ)
また七日が来る
そっとため息をつく
湯浴みもすませた
わたくしが手ずから織った新しい衣装はそこに
ほら、化粧(けは)う顔は華やぎ、うつくしい
でも、鏡のまえに座ったまま
こんな逢瀬を繰返すようになったのはいつのことだったか。
待ちきれず、いくたび数えたことか
一年(ひととせ)に一度というのはなんの罪ゆえ
あと三月、
あと一日(ひとひ)のなんと長かったことか
なれど、逢っているひとときのなんという速さ
いま、お逢いしたというのに
時刻(とき)は翼が生え
砂が零れ落ちて
一年(ひととせ)に一度など、堪えられない
どうしていつもいつもお逢いすることができないの
慕わしいあなた
恋しいあなた
ああ、業火に焼かれる
いつのころからか
あなたの眼のなかにある倦怠を
ふたりの双眸(め)のなかにあるものを知ってしまった
かささぎたちはこぞって橋を架けてくれる
わたくしたちは天のものたちからも
地のものたちからも
相愛の<恋人>としてのぞまれている。
どこからもことほがれる<逢瀬>
あまねくおおやけされる<逢瀬>
<逢瀬>の中の<逢瀬>
それがどういうことかおわかりになるかしら
相手の眼のなかに懈怠をみても
続けられる<逢瀬>
否、続けねばならない<逢瀬>
嗚呼、劫火に焼かれる
年ごとに
一年(ひととせ)に一度
逢うことが
堪らない
また、
その日がくる