『あかあかや明恵』2023年刊 新潮社
梓澤 要(あずさわ かなめ)の新刊。
明恵上人(1173-1232年)を
その従者イサの目で語られている。
このタイトルは明恵の和歌
あかあかやあかあかあかやあかあかや
あかあかあかやあかあかや月
から(私の好きなお和歌)。
明恵は武家に生まれ、八歳であいついで父母を亡くし、
十六歳で出家。
学才に秀で、なおひたすら釈迦に迫ろうと
みずから右耳を切り落とす。
明恵の見た夢を『夢記』として、書き続ける。
この小説にもたびたびその不思議な夢が語られて。
明恵は承久の乱で朝廷軍をかくまい、
その教えに打たれた幕府軍の総大将・北条泰時が
後に帰依したことでも知られる。
栄誉をもとめず、
自身の身命をすべて捧げつくし、
仏の教えにただただ迫ろうとする僧・明恵、
苦悩や葛藤を肉迫して描く、
その筆致はするどく、あたたかい。
◆目次
序
第一章 耳無し法師
第二章 夢の記
第三章 神の言葉
第四章 日出て先ず高山を照らす
第五章 栂尾の上人
第六章 承久の乱
終章 今日に明日を継ぐ
◆梓澤 要(あずさわ かなめ)
1953(昭和28)年静岡県生れ。明治大学文学部卒業。
1993(平成5)年、『喜娘』で第十八回歴史文学賞を受賞しデビュー。
執筆の傍ら、東洋大学大学院で仏教史を学ぶ。
2017年、『荒仏師 運慶』で第二十三回中山義秀文学賞を受賞。
著書に、『捨ててこそ空也』『万葉恋づくし』『光の王国 秀衡と西行』
『越前宰相秀康』『阿修羅』『百枚の定家』『夏草ヶ原』『遊部』
『橘三千代』『唐衣』『井伊直虎 女にこそあれ次郎法師』などがある。