凄まじい筆力! 桐野夏生『砂に埋もれる犬』朝日新聞出版 2021年刊 | 「月球儀」&「芭蕉座」  俳句を書くメゾソプラノ山本 掌のブログ

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第四句集『月球儀』
「月球儀」俳句を支柱とした山本 掌の個人誌。

「芭蕉座」は芭蕉「おくのほそ道」を舞台作品とする
うた・語り・作曲・ピアノのユニット。
    



俳句を金子兜太に師事。「海程」同人・現代俳句協会会員。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桐野夏生『砂に埋もれる犬』朝日新聞出版 2021年刊 494ページ

 

 

桐野夏生の凄まじい筆力!

 

ページをめくる手が止まらない。

 

 

「貧困と虐待の連鎖――。


母親という牢獄から脱け出した少年は、


女たちへの憎悪を加速させた。」と帯。

 

 

 

もう息が詰まってしまう・・・

 

虐待を受けつづける「少年」に感情移入して、

 

一気呵成に読んでしまいました。

 

 

このヒリヒリとした痛みはなに。

 

この渇きは・・・

 

 

いつ食べられるか、絶望的な空腹への恐怖。

 

生きるか死ぬかの瀬戸際では<善意>など届きはしない。

 

施設、里親のところで毎日三食、

 

食べられるようになり、

 

学校へ行けるようになっても

 

「普通の子」の「普通」のことができない。

 

「普通」という、そのことがわからない。

 

少年の「渇き」はもっと<生>の奥から顔を出す。

 

 

 

装画:フランシスコ・デ・ゴヤ

 

装幀:水戸部 功