桐野夏生『砂に埋もれる犬』朝日新聞出版 2021年刊 494ページ
桐野夏生の凄まじい筆力!
ページをめくる手が止まらない。
「貧困と虐待の連鎖――。
母親という牢獄から脱け出した少年は、
女たちへの憎悪を加速させた。」と帯。
もう息が詰まってしまう・・・
虐待を受けつづける「少年」に感情移入して、
一気呵成に読んでしまいました。
このヒリヒリとした痛みはなに。
この渇きは・・・
いつ食べられるか、絶望的な空腹への恐怖。
生きるか死ぬかの瀬戸際では<善意>など届きはしない。
施設、里親のところで毎日三食、
食べられるようになり、
学校へ行けるようになっても
「普通の子」の「普通」のことができない。
「普通」という、そのことがわからない。
少年の「渇き」はもっと<生>の奥から顔を出す。
装画:フランシスコ・デ・ゴヤ
装幀:水戸部 功