能楽師・安田登『見えないものを探す旅 旅と能と古典』亜紀書房 2021年刊  | 「月球儀」&「芭蕉座」  俳句を書くメゾソプラノ山本 掌のブログ

「月球儀」&「芭蕉座」  俳句を書くメゾソプラノ山本 掌のブログ

第四句集『月球儀』
「月球儀」俳句を支柱とした山本 掌の個人誌。

「芭蕉座」は芭蕉「おくのほそ道」を舞台作品とする
うた・語り・作曲・ピアノのユニット。
    



俳句を金子兜太に師事。「海程」同人・現代俳句協会会員。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<見る>とはなにかと自分へ問いかける本。

 

「いつもの風景が、その姿を変える

単なる偶然、でも、それは意味ある偶然かもしれない。


世界各地へ出かけ、また漱石『夢十夜』や三島『豊饒の海』、


芭蕉など文学の世界を逍遥し、

 

死者と生者が交わる地平、


場所に隠された意味を探し求める。

能楽師・安田登が時空を超える精神の旅へといざなう。」と本の紹介。

 

 

安田登(やすだ のぼる)さんは能楽師・ワキ方。

 

「平家物語」「太平記」100分で名著の講師として

 

ご存知の方も多いのでは。

 

 

能のワキは「分く」を語源とし、

 

この世とあの世、生者と死者との境界にいる人。

 

 

ワキによって観客・現実の人を

 

<「ここ」で霊・死者と出会わせてしまう>と安田さんは言う。

 

 

芭蕉の「おくのほそ道」では

 

「芭蕉は自分の旅を能に見立てている」との指摘。

 

その詞章、僧形での旅、連句への言及などなど、

 

じつに興味深い。

 

そして「芭蕉は夢路の旅を続けながら、

 

一歩一歩、おくのほそ道に足を踏み入れていき、

 

その人格の変容とともに俳諧は完成してゆく」

 

 

 

 

【もくじ】
■ はじめに 

 

■ 旅
敦盛と義経
奄美
チベットで聴いた「とうとうらり」
復讐の隠喩
人を待つ男
孤独であることの勇気
ベトナムは美しい
生命の木

■ 夢と鬼神——夏目漱石と三島由紀夫

『夢十夜』 待ちゐたり
 太虚の鬼神——『豊饒の海』


■ 神々の非在——古事記と松尾芭蕉
笑う神々——能『絵馬』と『古事記』
謡に似たる旅寝
非在の蛙

■ 能の中の中国
西暦二千年の大掃除 時を摑む
麻雀に隠れた鶴亀
超自然力「誠」
神話が死んで「同」が生まれる

■ 日常の向こう側
心のあばら屋が見えてくる
レレレのおじさんが消えた日
掃除と大祓
死者は永遠からやってくる

■あとがき

 

 

 

◆安田登(やすだ・のぼる)


下掛宝生流能楽師。1956年千葉県銚子市生まれ。
高校時代、麻雀とポーカーをきっかけに

甲骨文字と中国古代哲学への関心に目覚める。

能楽師のワキ方として活躍するかたわら、

『論語』などを学ぶ寺子屋「遊学塾」を、

東京(広尾)を中心に全国各地で開催する。現在、関西大学特任教授。


著書に『あわいの力 「心の時代」の次を生きる』、

シリーズ・コーヒーと一冊『イナンナの冥界下り』(ともにミシマ社)、

『能 650年続いた仕掛けとは』(新潮新書)、

『あわいの時代の『論語』 ヒューマン2.0』(春秋社)、

『野の古典』(紀伊國屋書店)など多数。