平松洋子『父のビスコ』、慕わしい、著者初の自伝的エッセイ♪ | 「月球儀」&「芭蕉座」  俳句を書くメゾソプラノ山本 掌のブログ

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第四句集『月球儀』
「月球儀」俳句を支柱とした山本 掌の個人誌。

「芭蕉座」は芭蕉「おくのほそ道」を舞台作品とする
うた・語り・作曲・ピアノのユニット。
    



俳句を金子兜太に師事。「海程」同人・現代俳句協会会員。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

平松洋子『父のビスコ』小学館 2021年刊

 

食と生活、文芸と作家などをテーマに

 

執筆した著者。

 

<食>に関する著作をこれまで読んできました。

 

「おあげさん」はあの油揚げに焦点をあてた本。

 

 

この「父のビスコ」では

 

祖父・祖母、父母の記憶をていねいに記す、

 

初の自伝的エッセイ集。

 

 

あくまでの筆致はおさえて、

 

その滋味あふれる文章は、

 

その本質をさらりと、それでいて深い。

 

タイトルとなった「父のビスコ」にうたれました。

 

親しみはあってもあまり話すことのなかった「父」。

 

入院から介護施設へ。

 

そのおりの父の発言が胸に刺さる。

 

「知りたいことまだたくさんある。

 

だから死ぬわけにはいかん」

 

「ここの生活には目新しいものはないほうがいい」と

 

上等な松花堂弁当にそっと箸をおく。

 

温かい鰻重には

 

「わあ鰻!? 柔らかい宝石を食べているようだ」と

 

相好をくずす。

 

そのお父上が亡くなられたのが1月23日。

 

 

 

◆目次
「父のどんぐり 」

「母の金平糖 」

「風呂とみかん」

「ばらばらのすし」

「やっぱり牡蠣めし」

「悲しくてやりきれない」

「饅頭の夢」
「おじいさんのコッペパン」

「眠狂四郎とコロッケ」

「インスタント時代」

「ショーケン一九七一」

「『旅館くらしき』のこと」

「流れない川」

 「民芸ととんかつ」

「祖父の水筒」

「場所」

「父のビスコ」



『旅館くらしき』創業者による名随筆を同時収録。