遠田潤子『イオカステの揺籃(ゆりかご)』、
9月の新刊です。
鋭く描かれる<母親の問題>。
母親と息子、母親と娘、母親と父親、
それぞれの深く絡み合った関係性が
これでもかこれでもかとたたみかける。しかも息苦しい。
遠田さんはその筆致の確かさで、
ぐいぐいと引っ張ってゆく。
それだけに終末の蜘蛛の糸のような、
ほんのひとすじのひかりが染み入って。
カバー写真:Martin
装幀:鈴木久美
造本がこよなく美しい。
◆遠田潤子さんはインタビューで、このように語って
「生きるために自分の居場所をどこに見つけるかというテーマで、
私は小説を書きたいのだと思います。
家から逃げ出したり、家と戦ったりして、
新しい居場所を自分で作らなければいけません。
そのプロセスを私は書きたい。」
◆本紹介文はこちら
「バラが咲き乱れる家で、新進気鋭の建築家・青川英樹は育った。
「バラ夫人」と呼ばれる美しい母。
ダムと蕎麦が好きな仕事人間の父。
母に反発して自由に生きる妹。
英樹の実家はごく普通の家族のはずだった。
だが、妻が妊娠して生まれてくる子が「男の子」だとわかった途端、
母が壊れはじめた......。その異常な干渉」