「父が壊した女。それでも俺はあの女が描きたい」。
遠田潤子「人でなしの櫻」のジャックはこれ。
「人間の業の極限に挑んだ」書かれたこの小説、
どこまでも、人非人となり、鬼となってすら
描きたい、描き切りたいと切望する日本画家。
すでに余命はわずか。
その描きたいというのは
父親が11年監禁した少女。
極限の状態がこれでもか、
これでもかと押し寄せ、
その怒濤の中で描くとは、生きるとは
その密度、
その濃度、
緊迫した時空を余すところなく書き切った作品。
遠田潤子「人でなしの櫻」 講談社 2022年3月刊
装幀:鈴木久美
写真:蜷川実花
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「しがない日本画家の竹井清秀は、
妻子を同時に喪ってから生きた人間を描けず、
「死体画家」と揶揄されていた。
ある晩、急な電話に駆けつけると、
長らく絶縁したままの天才料理人の父、康則の遺体があり、
全裸で震える少女、蓮子がいた。
十一年にわたり父が密かに匿っていたのだ。
激しい嫌悪を覚える一方で、
どうしようもなく蓮子に惹かれていく」。