白石正人 第二句集『泉番』(晧星社)を
ご恵与いただきました。ありがとうございます。
装幀:間村俊一
装画:佐中由紀枝「鳥の風景」
素敵な造本です。
跋は福島泰樹「よしや楼蘭遠くとも」
句をひき、著者白石正人との邂逅に触れ、
「読ませる」跋はさすが。
わたしも好きなこの「麒麟の舌」は帯文に。
列島を麒麟の舌がねぶる梅雨
「このスケールを、字数にして十三字、
音数にして十七音でやってのける。
日本列島を麒麟の長い舌が舐めている像が、
梅雨の気分とともに鮮やかに浮かびあがってくる。
俳句芸術が生み出した勲といおう!」
この句集名は著者「あとがき」に
句集名の『泉番』は、寺山修司全歌集にあった「森番」から
メチエとしての泉の番人を夢想しタイトルとしました。
その寺山の短歌は、『われに五月を』の
「ねむりてもわが内に棲む森番の少年と古きレコード一枚」からでしょうか。
俳句について白石さんはあとがきでこのように言っておられます。
俳句について、シンプルな眼差しで
シンプルに詠むのがいちばん「かっこいい」と思うに至りました。
そして死ぬまで「かっこよく」詠みたいと願っています。
五年後、どうなっているかは神のみが知っていることですが、
生きている限り第三句集を出すだろうと確信しています。
◆好きな句
狼声の凛乎たらずば絶え果てよ
鹿の眼の渇いてをりぬ冬木立
蒼穹へ二月の鷹の叫びたし
折鶴の角で喉突く安吾の忌
蠛蠓(まくなぎ)を払はねば闇脱けられず
荒海や海鼠どこまで這いずるか
冥途へと一段倒す藤寝椅子
やはらかに近づいてくる跣足(はだし)かな
冬菊やそこなおとこの手が綺麗
海鼠にも顔はありけり海の暮れ
堅気に生まれ無頼に沈む冬の蜂