「冬三日月」「身熱高し」俳句歌曲、
初演は2006年12月7日(木)
高崎演奏家協会 第26回定期演奏会でのこと。
この演奏、MDに記録して。
◆プログラムの曲目解説はこのようでした。
(かなり肩に力が入っています 笑)
冬三日月月の匂いの月を研ぐ
冬三日月かの
人形の盲いたる
(ひとがた)
身熱高しシトロンの泡の連なり
身熱高しえごの花散りつづけ
この四句は山本掌の第二句集『朱夏の柩』から
作曲家野澤美香が選句したものである。
俳句は<音>にするのに適さない定型である。
が、あえて歌うのは
なにか新しい表現を求めているからだ。
一句一曲でなく、
異なる世界をもつ句を
季語<冬三日月>・<身熱>
で一曲にしたものは前例のない試みである。
かつて俳句に熱中し、
言葉の感覚の確かな野澤ならでは、である。
「難しい」と歌う私。「いい曲」と書く私。
◆野澤美香
作曲を故入野義朗に師事。国立音楽大学作曲学部卒。
日本現代音楽協会新人賞入選。ICC国際作曲コンクール第二位受賞。
シビテッラ・ラニエリ財団からのフェローシップでイタリア滞在。
国内外で楽曲が演奏される他、
映像作品など活動は多岐に渡る。(当時)
◆山本掌
前橋生まれ。伊・仏にて研鑚を積む。
滝沢三重子、塚田佳男に師事。
二期会、藤原歌劇団でのオペラ、
フランス歌曲での演奏活動を経て
金子兜太師・自作の俳句によるオリジナル俳句歌曲を<花唱風弦>と題し、
上野奏樂堂、世界詩人会議日本大会など日本各地で公演。
<音の過客>「おくのほそ道」を原文の語りと委嘱曲でを企画。
構成し演奏。二期会会員。
NHK・BS「俳句王国」出演。
「海程」同人、現代俳句協会会員。句集『漆黒の翼』。
次数の制限があって、意が十分ではないが、
志向はわかっていただけるかな、と思っている。
俳句の歌曲はほんとうに少ない。
五・七・五という最短型式のもつ<ちから>ゆえといえる。
短歌は“うた”といわれるくらいであるし、
一首をとおしてながれている情緒・感情や感性が一貫して流れている。
が、俳句は上五から次の中七で、
あるいは中七から下五でぽーんと飛躍をしたり、
まるでちがうものをぶつける(二物配合、二物衝撃)。
句のことばの下に流れている世界を読み解くことなしに、
その感覚や感性にそうことなしに
<俳句>を読み込むとはいえないかもしれない。
そうしたことに答えてくれる
作曲家「野澤美香」は貴重な存在と確信している。
繰り出される<音>はつねに新鮮で意表をつく。
それでいて<この音>でなければならないと思わされる。その説得力。
句のつくりてであるわたしに新しい地平を示す。
音取り(譜面の音を実際にうたえるようにすること)に
たいへんな手間、エネルギー、時間がいる。
簡単にいうとムズカシイ。
が、
その見えてくる音の世界にには
うれしい驚きがあぶりだされてくる。
その初演。
作曲家は「初演とは迷いの産物を客観的に鑑賞する絶好の機会」
聴衆は「初演て聞くほうもドキドキするじゃないですか」
演奏者はもっとキンチョウする!?
(カオスのままでは人の前には立てない!?)