エリーナ・ガランチャのカルメン、
期待うわまわる、素晴らしさ!
歌手としての存在感が図抜けている。
安定感のある歌唱はもとより
演技の巧みさが傑出している。
感情の流れがひとフレーズごとにくっきりと。
繊細にして、大胆なこと。
1幕、ハバネラ、たばこ工場のあまりの暑さで、
仕事着を水洗いしながら(?)歌うカルメン。
スニガを手玉に取りながら、
ホセ(アラーニャ)を誘うまなざし。
野性味たっぷりなカルメンが立ち現われる。
女工同士の喧嘩で捕らえられ、
カルメンは逃げだす。
逃がすホセはもう蜘蛛の糸に絡めとられて。
2幕、幕があがると無音、
ダンサーが靴音でリズムを刻み、
フラメンコを踊るダンサー、
そこにオーケストラが入ってくる。
この演出も巧みで、じつに印象的。
猥雑で、いかがわしいリリャスパスティアの酒場で、
「ジプシーの踊り」をカルメンはダンサーとともに踊り!、
四人の男性踊り手にリフトされた態勢でも歌う!?。
ホセの歌いあげる「花の歌」のあとのきっぱりとした「Non!」
3幕「カルタのうた」
フラスキータとメルセデスの軽やかで明るいメロディーに
地を這うような「Mort 死」、
ミカエラとホセのやり取りのあいだの乾いた笑い。
そして4幕、「死」への息詰まるシーンは
まさに格闘のよう。
ガランチャは歌った、演じたというより
この舞台でカルメンを<生きて>いた!
ビゼー作曲「カルメン」は傑作!!
◆2010年、メトロポリタン歌劇場の公演。
指揮:ヤニック・ネゼ=セガン
演出:リチャード・エア
出演:エリーナ・ガランチャ(カルメン)
ロベルト・アラーニャ(ホセ)
バルバラ・フリットリ(ミカエラ)
テディー・タフ・ローズ(スニガ)
(画像はメトロポリタンビューイングからお借りしました)