<細密華麗な言葉のアラベスク> 山本掌 句集『月球儀』 ピアニスト高島登美枝さんのブログでの紹 | 「月球儀」&「芭蕉座」  俳句を書くメゾソプラノ山本 掌のブログ

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第四句集『月球儀』
「月球儀」俳句を支柱とした山本 掌の個人誌。

「芭蕉座」は芭蕉「おくのほそ道」を舞台作品とする
うた・語り・作曲・ピアノのユニット。
    



俳句を金子兜太に師事。「海程」同人・現代俳句協会会員。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2年前の今日、

 

ピアニスト高島登美枝さんが、

 

山本掌 句集『月球儀』の評を

 

<細密華麗な言葉のアラベスク>と題して

 

とても丁重にブログに書いてくださいました。

 

 

 

高島登美枝さんは

バレエピアニスト・歌曲伴奏者、

浅草 台東区のピアノ教室《高島ピアノ塾》主宰されています。

さらに東京藝術大学で「音楽文芸」の

博士課程に在籍中の研究者。

ブログも日日、更新されています。
  https://ameblo.jp/nikiyabayaderka/theme-10099040597.html

こちらから、どうぞ。


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<高島登美枝さんのブログ>

今日は句集のご紹介。



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仕事から帰宅したら、

小包が届いていました。



差出人は、山本掌さん。

群馬を拠点に活躍する

メゾ・ソプラノ歌手ですが、

女性俳人でもあります。



彼女のアメブロ↓

「月球儀」&「芭蕉座」 

俳句を書くメゾソプラノ山本 掌のブログ

クリックhttps://ameblo.jp/bashouza/



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掌さんと私は、

mixiで知り合いました。

気が付けば

かれこれ十年位のお付き合い。



その後も、お互いほぼ同時期に、

mixiからFacebookへ移行して

アメブロもやってたり、

Twitterもやってたりと、

SNS上では

非常に濃いお付き合いなのですが、

リアルで会ったことはまだないのですあせる



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顔と顔を合わせてリアルでしゃべると、

照れたり、遠慮したりで

必ずしも心の底を

率直に語れるとは限りませんが、

SNSでの文字によるコミュニケーションでは、

そういう壁を越えやすいので、

ときにリアルに会っている以上の

心の近しさを感じることもあります。



私にとって彼女はそういう存在ラブラブ



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その彼女から、突然の小包。

これは…もしやわくわく






そう。

つい最近刊行された、

彼女の句集でした。



アメブロで拝見して、

表紙の絵がいかにも

彼女らしいと思っておりました。



とても嬉しいサプライズ・ギフトプレゼントキラキラ



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彼女の句は、

華やかさと鋭さが

独特なバランスの中で

同居しています。



五感、

特に皮膚感覚に訴える表現が

巧みなところは、

プルーストの『失われた時を求めて』の

紅茶とマドレーヌや

カトレアのエピソードに相通じるように

思います。



では、私の好きな句を

幾つかご紹介いたしましょう。



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忌日まで草の結界泳ぎゆく



句集『月球儀』の冒頭1章は、

萩原朔太郎へのオマージュ。



朔太郎の撮影した写真の横に

掌さんの句が添えられています。



掌さんのお住まいのある

群馬県前橋市は

詩人・萩原朔太郎の出身地。



掌さんの句の

ときにデカダンの香りただよう世界観には、

朔太郎の影響が

強く感じられます。



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抱きしめる猫に遅日のにおいかな



これは説明不要ですね。

愛猫家にはたまらない一句です。



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曼殊沙華幼(おさな)をたおりにゆくわいな



北原白秋の詩に山田耕筰が付曲した

歌曲集《AIYANの歌》の第4曲目、

〈曼珠沙華〉を下敷きにしていると思われます。



曼珠沙華は

秋の彼岸の頃に墓地によく咲くため、

血のような色と相まって

不吉なイメージのある花です。



白秋の詩では、

「赤い、御墓の曼珠沙華(ひがんばな)

けふも手折りに來たわいな」

と歌われ、

良家の娘が未婚で妊娠し、

堕胎した(させられた?)後、発狂、

曼珠沙華の咲き乱れる野を

亡き児を求めてさまよう姿が

描かれています。

※解釈は諸説あります



対するこの句では、

曼珠沙華が幼児を手折りにいく、

とあります。



曼珠沙華は、

球根を中心に全体に毒性があり、

堕胎に用いられたと言います。

それを考え合わせると、

この句が凄みを持って迫ってきます。



追記:

記事執筆後、この句について

掌さんからメッセージをいただきました。

この句は、「曼珠沙華」で一旦切れるそうです。

「曼珠沙華が咲いている、そのイメージと
『幼をたおりにゆくわいな』。
二つのことをぶつける、

そこからイメージ・映像が出てくるかと」

とのことです。

でも「自由に読んでいいんです」とも。

みなさまはどう読まれますか?


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さくらとて懶惰の夜を欲(ほ)るわいの



合歓の花影のもつるる音を聞く



こんなふうに

官能的な句もあります。

花と絡めた表現によって

華麗さが増幅されていますね。



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ほとばしりわが魂魄の寒牡丹



触れてみるこの寂寥の霜柱



研ぎ澄まされた魂から

ほとばしったような句もあります。

冬の寒気を織り込むことで、

内面の張り詰めたシャープさが

読む者の皮膚感覚からも迫ってきます。



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ここにご紹介した句の他、

おそらく掌さんが

父上、母上を見送った体験から

生まれたと思われる句も

いくつか含まれており、

命や、人生、生死について

思いを馳せる機会となりました。



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俳句はわずか十七音で、

季語を含まなければならないという

縛りが厳しい詩歌です。

ですから、

俳人の言葉に対するセンスは

ハンパないものがあります。



私には俳句を作る才能はなくて、

ひたすら読む側専門なのですが、

無駄を削ぎ落とし、

洗練された語句選びからは

大いに教えられることがあります。



言葉に対する感性を磨くためにも、

詩や短歌、俳句には

これからも積極的に

親しんでいきたいと思います。