2年前の今日、
ピアニスト高島登美枝さんが、
山本掌 句集『月球儀』の評を
<細密華麗な言葉のアラベスク>と題して
とても丁重にブログに書いてくださいました。
高島登美枝さんは
バレエピアニスト・歌曲伴奏者、
浅草 台東区のピアノ教室《高島ピアノ塾》主宰されています。
さらに東京藝術大学で「音楽文芸」の
博士課程に在籍中の研究者。
ブログも日日、更新されています。
https:/
こちらから、どうぞ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
<高島登美枝さんのブログ>
今日は句集のご紹介。
゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆
仕事から帰宅したら、
小包が届いていました。
差出人は、山本掌さん。
群馬を拠点に活躍する
メゾ・ソプラノ歌手ですが、
女性俳人でもあります。
彼女のアメブロ↓
「月球儀」&「芭蕉座」
俳句を書くメゾソプラノ山本 掌のブログ
クリックhttps:/
゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆
掌さんと私は、
mixiで知り合いました。
気が付けば
かれこれ十年位のお付き合い。
その後も、お互いほぼ同時期に、
mixiからFacebookへ移行して
アメブロもやってたり、
Twitterもやってたりと、
SNS上では
非常に濃いお付き合いなのですが、
リアルで会ったことはまだないのですあせる
゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆
顔と顔を合わせてリアルでしゃべると、
照れたり、遠慮したりで
必ずしも心の底を
率直に語れるとは限りませんが、
SNSでの文字によるコミュニケーションでは、
そういう壁を越えやすいので、
ときにリアルに会っている以上の
心の近しさを感じることもあります。
私にとって彼女はそういう存在ラブラブ
゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆
その彼女から、突然の小包。
これは…もしやわくわく
そう。
つい最近刊行された、
彼女の句集でした。
アメブロで拝見して、
表紙の絵がいかにも
彼女らしいと思っておりました。
とても嬉しいサプライズ・ギフトプレゼントキラキラ
゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆
彼女の句は、
華やかさと鋭さが
独特なバランスの中で
同居しています。
五感、
特に皮膚感覚に訴える表現が
巧みなところは、
プルーストの『失われた時を求めて』の
紅茶とマドレーヌや
カトレアのエピソードに相通じるように
思います。
では、私の好きな句を
幾つかご紹介いたしましょう。
゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆
忌日まで草の結界泳ぎゆく
句集『月球儀』の冒頭1章は、
萩原朔太郎へのオマージュ。
朔太郎の撮影した写真の横に
掌さんの句が添えられています。
掌さんのお住まいのある
群馬県前橋市は
詩人・萩原朔太郎の出身地。
掌さんの句の
ときにデカダンの香りただよう世界観には、
朔太郎の影響が
強く感じられます。
゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆
抱きしめる猫に遅日のにおいかな
これは説明不要ですね。
愛猫家にはたまらない一句です。
゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆
曼殊沙華幼(おさな)をたおりにゆくわいな
北原白秋の詩に山田耕筰が付曲した
歌曲集《AIYANの歌》の第4曲目、
〈曼珠沙華〉を下敷きにしていると思われます。
曼珠沙華は
秋の彼岸の頃に墓地によく咲くため、
血のような色と相まって
不吉なイメージのある花です。
白秋の詩では、
「赤い、御墓の曼珠沙華(ひがんばな)
けふも手折りに來たわいな」
と歌われ、
良家の娘が未婚で妊娠し、
堕胎した(させられた?)後、発狂、
曼珠沙華の咲き乱れる野を
亡き児を求めてさまよう姿が
描かれています。
※解釈は諸説あります
対するこの句では、
曼珠沙華が幼児を手折りにいく、
とあります。
曼珠沙華は、
球根を中心に全体に毒性があり、
堕胎に用いられたと言います。
それを考え合わせると、
この句が凄みを持って迫ってきます。
追記:
記事執筆後、この句について
掌さんからメッセージをいただきました。
この句は、「曼珠沙華」で一旦切れるそうです。
「曼珠沙華が咲いている、そのイメージと
『幼をたおりにゆくわいな』。
二つのことをぶつける、
そこからイメージ・映像が出てくるかと」
とのことです。
でも「自由に読んでいいんです」とも。
みなさまはどう読まれますか?
゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆
さくらとて懶惰の夜を欲(ほ)るわいの
合歓の花影のもつるる音を聞く
こんなふうに
官能的な句もあります。
花と絡めた表現によって
華麗さが増幅されていますね。
゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆
ほとばしりわが魂魄の寒牡丹
触れてみるこの寂寥の霜柱
研ぎ澄まされた魂から
ほとばしったような句もあります。
冬の寒気を織り込むことで、
内面の張り詰めたシャープさが
読む者の皮膚感覚からも迫ってきます。
゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆
ここにご紹介した句の他、
おそらく掌さんが
父上、母上を見送った体験から
生まれたと思われる句も
いくつか含まれており、
命や、人生、生死について
思いを馳せる機会となりました。
゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆
俳句はわずか十七音で、
季語を含まなければならないという
縛りが厳しい詩歌です。
ですから、
俳人の言葉に対するセンスは
ハンパないものがあります。
私には俳句を作る才能はなくて、
ひたすら読む側専門なのですが、
無駄を削ぎ落とし、
洗練された語句選びからは
大いに教えられることがあります。
言葉に対する感性を磨くためにも、
詩や短歌、俳句には
これからも積極的に
親しんでいきたいと思います。