<ムットーニが語る ボックス・シアター「殺人事件}>
前橋文学館で催され、参加してきました。
「ムットーニとは、アーティスト武藤政彦の別名であり、
作り出す作品そのもの」。
萩原朔太郎「殺人事件」、
今年2018年に前橋文学館に収蔵され、
ただいまの「この二人はあやしい」展でお披露目されています。
立体の箱のなかで繰りひろげる、
人形の複雑な動き・光・音楽まさにシアター。
ムットーニ氏は俳優であり、演出家であり、
照明、美術、音楽を
ひとりで何役も兼ねる作家。
その創り出す世界はかつてなかった作品。
詩「殺人事件」を読み、
読み込んだものをどのように作品に落とし込んでゆくか、
貴重な話しをたっぷり聴けました。
話しぶりも鍛えた<声>。
その声で、ムットーニ氏の<上演>で「殺人事件」をじっくりと。
さらに芥川龍之介「蜘蛛の糸」、
「ま、クリスマス・イブに「殺人事件」と「地獄」もなんですから」、と
「キャバレー」で華やかに幕。
ムットーニ・ボックスシアター「殺人事件」は
「この二人はあやしい」で上演されていますので、
ぜひ、とうぞ。
2019年1月20日(日)まで。
◆ムットーニ・ホームページ
http://www.muttoni.net/about/index.html
殺人事件 萩原朔太郎
とほい空でぴすとるが鳴る。
またぴすとるが鳴る。
ああ私の探偵は玻璃の衣裝をきて、
こひびとの窓からしのびこむ、
床は晶玉、
ゆびとゆびのあひだから、
まつさをの血がながれてゐる、
かなしい女の屍體うへで、
つめたいきりぎりすが鳴いてゐる。
しもつき上旬のある朝、
探偵は玻璃の衣裝をきて、
街の十字巷路を曲がった。
十字巷路に秋のふんすゐ。
はやひとり探偵はうれひをかんず。
みよ、遠いさびしい大理石の歩道を、
曲者はいつさんにすべつてゆく。