萩原朔太郎「火」は詩集『氷島』に載っています。
この朔太郎自作の詩の朗読は
1930年にSPレコードになったもの。
youtubeにもありました。
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火
赤く燃える火を見たり
けものの如く
汝は沈默して言はざるかな。
夕べの靜かなる都會の空に
炎は美しく燃え出づる
たちまち流れはひろがり行き
瞬時に一切を亡ぼし盡せり。
資産も、工場も、大建築も
希望も、榮譽も、富貴も、野心も
すべての一切を燒き盡せり。
火よ
いかなればけものの如く
汝は沈默して言はざるかな。
さびしき憂愁に閉されつつ
かくも靜かなる薄暮の空に
汝は熱情を思ひ盡せり。