萩原朔太郎「火」&朔太郎の自作朗読 | 「月球儀」&「芭蕉座」  俳句を書くメゾソプラノ山本 掌のブログ

「月球儀」&「芭蕉座」  俳句を書くメゾソプラノ山本 掌のブログ

第四句集『月球儀』
「月球儀」俳句を支柱とした山本 掌の個人誌。

「芭蕉座」は芭蕉「おくのほそ道」を舞台作品とする
うた・語り・作曲・ピアノのユニット。
    



俳句を金子兜太に師事。「海程」同人・現代俳句協会会員。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

萩原朔太郎「火」は詩集『氷島』に載っています。

この朔太郎自作の詩の朗読は

1930年にSPレコードになったもの。

youtubeにもありました。

 https://www.youtube.com/watch?v=GinRTxx2GpA

 

 

 

 

 

 

 火

赤く燃える火を見たり

けものの如く

汝は沈默して言はざるかな。


夕べの靜かなる都會の空に

炎は美しく燃え出づる

たちまち流れはひろがり行き

瞬時に一切を亡ぼし盡せり。

資産も、工場も、大建築も

希望も、榮譽も、富貴も、野心も

すべての一切を燒き盡せり。


火よ

いかなればけものの如く

汝は沈默して言はざるかな。

さびしき憂愁に閉されつつ

かくも靜かなる薄暮の空に

汝は熱情を思ひ盡せり。