「日本の工芸 自然を愛でる」展を
東京近代美術館工芸館で観る。
日本の工芸、その高度な技巧によってつくられた
名品120点が展示されている。
杉浦康益(陶)の「陶の博物誌 牡丹」、
最初に直径80センチ以上ありそうな牡丹に魅かれる。
その美しさ、その存在感、ただならぬものがあって。
館の方にうかがったところ、花びらを一枚一枚焼き、
組み合わせ、低温で焼成するとのこと。
「落花」は150もの椿があり、
白と灰の陰影のなかに、
黒釉の椿が二輪。
黒漆のような花弁にに蘂の金が映える。
漆、彫金、ガラス、染など逸品がずらりと並ぶ。
この館のあちこちにある椅子も
バタフライチェアや黒田辰秋などの作品。
座ってもいいのがうれしい。
2月18日(日)まで。
◆工芸館ホームページ (作品はこちらから、どうぞ)
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東京近代美術館工芸館
日本では、自然の移ろいゆく情景や風光の美しさに育まれた
特有の自然観をうかがわせる多様な工芸が、
暮らしを彩り日々の生活環境を装っています。
無釉や単色の陶磁と色絵、染めと織り、漆塗りと蒔絵、
金属の鋳込みと彫金、また天然の特質を活かす木竹など、
素材を駆使して優れたわざを開発してきました。
そうすることで自然にある美を感じとりかたちとして描写しています。
いうなら日本の工芸は、自然を愛でることを主要な表題とし、
時代に即した固有の表現芸術として発展してきました。
厳しくも豊かな自然のなかで生きる私たちの生命観を
反映したものでもあり、その文化は美しい日本の伝統を表しています。
板谷波山(陶)、森口華弘(染)、赤塚自得と髙橋節郎、室瀬和美(漆)、
海野清(彫金)は自然の事象を自らの表現で描きました。
十二代三輪休雪や杉浦康益(陶)、藤田喬平(ガラス)、
増村紀一郎(漆)は自然の形象の内に自らの創意を表しました。
鈴木治と宮永東山(陶)、古伏脇司(漆)、田辺陽太(竹)は
自然の事象から感受した心情をオブジェとし、
そして角偉三郎(漆)、氷見晃堂と須田賢司(木)、
藤沼昇(竹)は素材そのものの美と詩情とを結びつけて
造形を追及しています。