オペラ「松風」日本初演! 細川俊夫作曲 @新国立劇場 オペラパレス | 「月球儀」&「芭蕉座」  俳句を書くメゾソプラノ山本 掌のブログ

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第四句集『月球儀』
「月球儀」俳句を支柱とした山本 掌の個人誌。

「芭蕉座」は芭蕉「おくのほそ道」を舞台作品とする
うた・語り・作曲・ピアノのユニット。
    



俳句を金子兜太に師事。「海程」同人・現代俳句協会会員。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ついにオペラ「松風」、

日本初演を初日(16日)に観る。


能「松風」を基にして、

細川俊夫作曲による第三作めのオペラ。

イルカ・ザイフェルトによるドイツ語のテキスト。

2011年5月、

ベルギーのモネ劇場での世界初演をはじめ、

世界各地での50回以上の上演されている。

歌い手は四人、ダンサーと

ヴォーカルアンサンブル。

上演時間90分。


波の音、

風(ヴォーカルアンサンブルによる息の音)が吹き渡る。


松風(ソプラノ)イルゼ・エーレンス、

村雨(メゾソプラノ)シャルロッテ・ヘッレカント

の二人の姉妹は

黒い蜘蛛の巣のような糸が張り巡らされ、

そこを降りて登場する。

じつに印象的で、照明とあいまって、ゆめまぼろしのよう。

塩田千春とピア・マイヤー=シュリーヴァーによる美術。


能の橋掛かりが彼岸から此岸への<橋>であるように

このオペラでは黒い糸がその<橋>であるか。

宙吊りの斜めに傾いだ体勢で、

歌う無調音楽の

 

二重唱の美しいこと。


松(行平・男)と風(女)の纏いつく狂乱(エクスタシー)、

その狂おしい想いが水の炎となって沸きあがる。

能管あるいは横笛のようなフルートが切り立つ。

その直後、ばらばらと落ちてくる巨大な松葉は

世界そのものの崩壊でもあるか。


霊は有漏路から無漏路へ。

夢幻の一夜の明けた浜には

波の音、

風があるばかり。




このオペラでは歌い手も話し、ダンサーのように動き、踊る。

能が語り、謡い、舞うように。

細川の精密にして、静寂をたたえた音楽、

サシャ・ヴァルツの演出・振付による身体表現。


松風と村雨はふたりでひとり。

陰、陽、男、女、生、死、

ひとの内奥にある、

見えないものを可視化した

美意識の凝縮されたかつてない舞台作品を観た。



◆オペラ「松風」

細川俊夫&サシャ・ヴァルツ


松風:イルゼ・エーレンス

村雨:シャルロッテ・ヘッレカント

旅の僧:グリゴリー・シュカルパ

須磨の浦人:萩原 潤




ダンス:サシャ・ヴァルツ&ゲスツ

ヴォーカル・アンサンブル:新国立劇場合唱団


指揮:デヴィッド・ロバート・コールマン

演出・振付:サシャ・ヴァルツ

管弦楽:東京交響楽団


美術:塩田千春、
    ピア・マイヤー=シュリーヴァー

衣装:クリスティーネ・ビクレル

照明:マルティン・ハウク