リヒャルト・シュトラウス「サロメ」演奏会形式 N響 @NHK-BS | 「月球儀」&「芭蕉座」  俳句を書くメゾソプラノ山本 掌のブログ

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第四句集『月球儀』
「月球儀」俳句を支柱とした山本 掌の個人誌。

「芭蕉座」は芭蕉「おくのほそ道」を舞台作品とする
うた・語り・作曲・ピアノのユニット。
    



俳句を金子兜太に師事。「海程」同人・現代俳句協会会員。


N響 サロメ



リヒャルト・シュトラウス作曲「サロメ」の演奏会形式の公演。

シャルル・デュトワの指揮による

NHK交響楽団1823回定期(2015年12月6日)を録画で観る。 


演奏会形式をとることによって、

シュトラウスの<響き>、<音楽>がより明確に立ちあがる。

彩りにあふれ、官能や頽廃美というより、

緊迫感のある演奏。

あのデュトワの集中そして精力的な指揮。


とくに第4場の「7枚のヴェールの踊り」。

舞台だとサロメがどう踊るかに眼がいってしまうが、

艶やかな舞踊のシーンが演奏会形式ということで、

音がこれほど香気をもって表現されるのものか。


なんといっても歌い手が素晴らしい。

演奏会形式であっても、全員が暗譜。

もうこのままオペラの舞台にのせられるほど

声も演技も身体に入っている。


サロメは「サロメ」を持役にしているグン・ブリット・バークミン。

ボブスタイルの黒髪、高い鼻梁、紅い唇、風貌もサロメのイメージ。

強靭なドラマティック・ソプラノの声。その演技。

そこにくっきりとしたドラマを構築してゆく。


第3場のエギルス・シリンスのヨカナーンと

サロメの対話というより、

<誘惑>という激論にオケも白熱してゆく。


キム・ベグリーのヘロデ王。

オペラではあまり目立たない(?)、

このオペラでは唯一「狂気」をもたない人物。

少女サロメに惚れていたり、俗物であって、

それゆえに「ヨカナーン」の聖性を信じている。

ヨカナーンの生首を求めたサロメに対し、

ヘロデはおののきや畏れをいだき、代わりの物をいろいろ示す。

ヨカナーンの首と戯れているサロメをみて、

最後の台詞「あの女を殺せ」をこれほど納得できたことはない。



銀盆のヨカナーンの首

             「サロメ」ビアズレー挿画



ヘロディアスのジェーン・ヘンシェルの強烈な存在感。


サロメ「ああ!なぜ私を見なかったの、ヨカナーン?

お前は目に、自分の神を見ようとする者の目かくしをした。

いいわ!お前は自分の神を見た、ヨカナーン、

でも、この私をいちども見なかったのね。

もし私を見ていたら、私を愛したはずよ!

私はお前の美しさに渇れている。

お前のからだに飢えている。

酒もりんごも、私の欲情をしずめることはできないわ。

私はどうしたらいいの、ヨカナーン?

高潮も、津波も、この欲望の火を消せない(内垣啓一訳)」。


首を持つサロメ

             「サロメ」ビアズレー挿画



◆サロメ:グン・ブリット・バークミン

 ヨカナーン:エギルス・シリンス

 ヘロデ:キム・ベグリー

 ヘロディアス:ジェーン・ヘンシェル


 指揮:シャルル・デュトワ

 管弦楽:NHK交響楽団

 

◆ http://www.nhkso.or.jp/concert/concert_detail.php?id=465
 (歌手の名前をクリックすると詳しいプロフィール)