金子兜太 ブログより
5月の高崎兜太句会の日。
時間で、披講を始める。
兜太先生、ちょっと遅れて到着。
顔を見せおもむろに「トイレに行ってくる」。
兼題は「春光」。
選句の高得点句は8人(私も選ぶ)、
問題句としたのが1人。
春光のどこへも行かぬ舟に乗る
句評:詩情がある。
春の光のなかの心情のたゆたい。春愁をかんじる。
兜太評:現実の景でなく、幻想のなか、想像のなかととる。
春の光のなかで、幻想にふけっている。
「春光」という季語がこういう気分を呼びやすい。
それほど新鮮ではない。
この句は佳作。
ちなみに今日の句会では
「佳作」とそれより良い句を「入選」とした。
廃港よ深く抱くは海霧(きり)の猫
「陸前高田の友を訪いて」と前書きがあり、
選句はひとり。
兜太評:非常に感覚が効いていて、うまい。
「深く抱く」、余韻がある。佳作。
元句「海霧に猫」→「海霧<の>猫」とした。
二月の町に拾ふ雲形定規かな
選句は2名。私もとった句。
兜太評:「二月」と「町に拾う雲形定規」がよく似合う。入選。
春光やさびしき心臓犬が喰う
問題が集まった句。
評:春光にたとえている、のか?
犬には「さびしき心臓」など、うまいか(笑)?
心臓、犬など朔太郎を感じる。
兜太評:春光のなか、春光の本質にせまる。
それほど重くうけとらなくていい。
これは「や」でなく「の」、
「犬が喰う」がちょっとナルシスティック。
「犬も喰わぬ」ではどうだ。
直したら入選。
直した句はこちら
春光のさびしき心臓犬も喰わぬ
ふ~む。
「犬も喰わぬ」という発想に驚く。
これは私の句。
「なんだな、<春光>と兼題をだしたが、
この季語をかえた句が多いな」と。
句会の合評でとりあげなかった句を
兜太先生、一気呵成に講評して句会終了。