オペラ「アルチーナ」2015年エクサン・プロバンス音楽祭 @NHK-BS | 「月球儀」&「芭蕉座」  俳句を書くメゾソプラノ山本 掌のブログ

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第四句集『月球儀』
「月球儀」俳句を支柱とした山本 掌の個人誌。

「芭蕉座」は芭蕉「おくのほそ道」を舞台作品とする
うた・語り・作曲・ピアノのユニット。
    



俳句を金子兜太に師事。「海程」同人・現代俳句協会会員。



              プティポン


2015年エクサン・プロバンス音楽祭で行われた
ヘンデル作曲のオペラ「アルチーナ」を録画で観る。
初めてオペラ。

バロック・オペラのため、オーケストラもバロックオケ。
当時の慣習で、
レチタチィーボとアリアでストーリー展開。
主役はみんなアリアを歌う。

ドラマは数百年生きている魔女アルチーナは絶世の美女。
島(自分の国)にやってきた騎士と恋を、逸楽を愉しみ、
飽きると動物に変えてしまう。
ルッジェーロも許婚ブラダマンテを
忘れてアルチーナと熱愛。
その島にブラダマンテが弟のリッチャルドの姿に化け、
ルッジェーロの後見人のメリッソと共に、
許婚を探しにやって来る。


アルチーナのプティポンは好きな歌手。
声楽曲のリサイタルでその歌唱の知的で、
ちょっとシニックだったりして、惹かれた。
オペラで観るのは初めて。
アリア「Oh! mio cor(ああ、わが恋人よ)」の
なんと激情、そして哀しみのあふれた痛ましいほどの熱唱。

ブラダマンテのブラディクも男前なアルト。
迷彩服軍服が凛々しい。
深々とした声が魅力的。

ルッジェーロはメゾソプラノのズボン役ではなく、
カウンターテノールのジャルスキー。

アルチーナ、あるいは妹のモルガーナ、
ブラマンテ、ルジェーロの三重唱になると、
カウンターテノールの高い声と
女声のブラマンテが低音になっていたり、
ちょっと不思議な気分になる。

少年のオベルト(行方不明の父を捜す少年)、
これもソプラノの役をボーイソプラノのエリアス・メドラーに。

舞台はセンターに明るい部屋(ここでは若く美貌)、
上手と下手に作業場というか、書斎というか、そこに入ると老婆に。
<魔女>であることを視覚的にはっきりと見せる。
階上には動物に替える実験室。


演出は読み替えで、美術も瀟洒。
荒唐無稽といっていい物語を
魔法でなく、真実、愛してしまったその心情を際立たせて、
端正で美しいヘンデルの音楽を響かせいる。

プティボン、ブラディク、プロハスカの
熱唱、好演で素晴らしい公演。



◆歌劇「アルチーナ (Alcina)」ゲオルク・ヘンデル作曲


アルチーナ(王国を支配する魔女): パトリシア・プティボン

ルッジェーロ(魔女に魅入られた騎士): フィリップ・ジャルスキー

モルガーナ(女王アルチーナの妹で魔女): アンナ・プロハスカ

ブラダマンテ/リッチャルド(ルッジェーの婚約者): カタリナ・ブラディク

オロンテ(モルガーナの婚約者): アンソニー・グレゴリー

メリッソ(ルッジェーロの後見人): クシシュトフ・ボンチク

オベルト(行方不明の父を捜す少年): エリアス・メドラー


<管弦楽>フライブルク・バロック・オーケストラ

<指 揮>アンドレア・マルコン

<演 出>ケイティ・ミッチェル


収録: 2015年6月30日、7月10日 プロバンス大劇場(フランス)