野田版「フィガロの結婚 ~庭師は見た!~」@NHKーBS | 「月球儀」&「芭蕉座」  俳句を書くメゾソプラノ山本 掌のブログ

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第四句集『月球儀』
「月球儀」俳句を支柱とした山本 掌の個人誌。

「芭蕉座」は芭蕉「おくのほそ道」を舞台作品とする
うた・語り・作曲・ピアノのユニット。
    



俳句を金子兜太に師事。「海程」同人・現代俳句協会会員。




野田「フィガロ」




野田秀樹×井上道義
「フィガロの結婚 -庭師は見た!」
を録画で観た。

この公演、チケットが完売で、
観劇がかなわなかったので、BSでの放映はうれしい。

指揮は井上道義、
オーケストラは読売交響楽団。


「フィガロの結婚」を黒船襲来時代の日本に置き換えた演出、
まさに意欲的というか、冒険的。
黒船に乗ってやってきた
アルマヴィーヴァ伯爵(ナターレ・デ・カロリス)と
伯爵夫人(テオドラ・ゲオルギュー)は、特権階級。
お小姓のケルビーノ。
この異国の3人はイタリア語で歌う。

この西洋人に対して、スザンナやフィガロはイタリア語で、
日本人同士は日本語で歌う。
この日本語訳も野田が手がけ、
お得意の言葉遊びもとびかう、じつにこなれた日本語。

伯爵は日本人に対して、
高圧的に領地の娘の初夜権を要求する。
「支配者と被支配者」、
「西洋と東洋」の構造を
くっきりとうかびあがらせる。

そのなかでの合唱もアンサンブル・ダンサーも、
生き生きとした庶民そのもの。
伯爵はその人びとから逆襲される。

伯爵夫人、ソプラノのテオドラ・ゲオルギューが
スリムな容姿で、アリア「かつて愛されたが、今は飽きられた」
女の哀切を歌う。

ケルビーはメゾソプラノでなく、
カウンターテナーのマルテン・エンゲルチェズ。

スザ女=スザンナの小林沙羅さん大奮闘。
なんてチャーミングなスザンナ。芝居も歌も素晴らしい。
こんなスザンナだと伯爵はもうたまらない。

フィガ郎、大山大輔は歌も演技も姿も魅せる。

バルバ里奈(バルバリーナ)はコロン・えりか。
このひとも可愛い。

マルチェリーナは森山京子。
バルト郎(ドン・バルトロ)をバスの妻屋秀和。
この二人の円熟した声とコミックな演技。

俳優である廣川三憲さんは、
物語を語る、庭師アントニ男を演じる。

みなが大団円になる重唱部分で、
伯爵夫人が伯爵に向かって銃を発砲するが、
この<怒り>が伯爵に届いたのだろうか。

「フィガロの結婚」は男女のじつに深刻な物語だと、
この演出は明確に差し出す。

モーツァルトは凄いとあらためて感じた。




◆ステージ写真(記事の中ごろより)
   http://ebravo.jp/archives/18724




◆歌劇「フィガロの結婚」(全4幕) モーツァルト 作曲

<演 出>野田秀樹

<出 演>
フィガ郎(フィガロ): 大山大輔

スザ女(スザンナ): 小林沙羅

アルマヴィーヴァ伯爵: ナターレ・デ・カロリス

アルマヴィーヴァ伯爵夫人: テオドラ・ゲオルギュー

ケルビーノ: マルテン・エンゲルチェズ

マルチェ里奈(マルチェリーナ): 森山京子

バルト郎(ドン・バルトロ): 妻屋秀和

走り男(バジリオ): 牧川修一

狂っちゃ男(クルツィオ): 三浦大喜

バルバ里奈(バルバリーナ): コロン・えりか

庭師アントニ男(アントニオ): 廣川三憲

<声楽アンサンブル>
佐藤泰子、紺野恭子、西本会里、増田 弓
新後閑大介、平本英一、千葉裕一、東 玄彦

<演劇アンサンブル>
川原田樹、菊沢将憲、近藤彩香、佐々木富貴子
佐藤悠玄、長尾純子、永田恵実、野口卓磨

<チェンバロ>服部容子

<合 唱>新国立劇場合唱団

<管弦楽>読売日本交響楽団

<総監督・指揮>井上道義


収録: 2015年10月24日 東京芸術劇場 コンサートホール