オペラ「金閣寺」を観た。
「金閣寺」三島由紀夫の小説をどうオペラ化したか。
ベルリン・ドイツオペラからの委嘱を受け、
クラウス・H・ヘンネベルクによるドイツ語の脚本を
黛敏郎が作曲。
初演は1976年、ベルリン・ドイツオペラ歌劇場において。
日本では1991年全幕初演、97年、99年に上演されている。
今回は16年ぶりで、私にとっては幻のオペラ。
奇しくも三島由紀夫生誕90年にあたる。
小説とオペラの決定的な違いは
金閣を燃やす学僧溝口が吃音ではなく、
右手に障害をもつ、ということ。
三島の文学作品を敬愛する
演出の田尾下哲もそこをどうするか、
悩みに悩み、
「精神的なコンプレックスの表出」と考えるにいたったと言う。
オペラでは溝口15歳から金閣を焼く21歳までだが、
これをテノールでなくバリトンが歌う。
より内省的、屈折した声が必然だった、かと。
12月6日(日)、溝口は宮本益光。
最初から最後まで、まるでモノオペラのように歌い続ける。
エピソードの積み重ねて、
溝口の<金閣>への愛憎、桎梏、執着(しゅうじゃく)、を描く。
このオペラのもうひとつの主役というべき
「金閣」がじつに荘厳、美麗な建築となり、
舞台を占める。
美術が素晴らしい。
紅葉の金閣、
雪の金閣、
そして炎上する金閣。
指揮は下野竜也、
オーケストラは神奈川フィルハーモニー管弦楽団。
精緻な音から、壮大なフィナーレまで、
濃密な、まさに楽音すら炎上してゆくよう。
東京オペラシンガーズの合唱が
溝口の内面を、経文を物語る。
このオペラ「金閣寺」、
歌手、演出、指揮、オーケストラ、美術、
が、みごとに嚙み合った公演となった。
「言葉によって、想像を超えた想像力を引き出す」
作家・三島由紀夫への音楽からのオマージュであった。
◆舞台写真・ぶらあぼより
http://ebravo.jp/archives/22964
【指揮】下野 竜也
【演出】田尾下 哲
【照明】沢田 祐二
【装置】幹子 S.マックアダムス
【衣裳】半田 悦子
【出演】
溝口:小森 輝彦(5日)/宮本 益光(バリトン)(6日)
父 :黒田 博(バリトン)
母 :飯田 みち代(ソプラノ)
若い男:高田 正人(テノール)
道詮 :三戸 大久(バス)
鶴川:与那城 敬(バリトン)
柏木 :鈴木 准(テノール)
女 :吉原 圭子(ソプラノ)
有為子:嘉目 真木子 (ソプラノ)
娼婦:谷口 睦美(メゾソプラノ)
管弦楽:神奈川フィルハーモニー管弦楽団。
合唱:東京オペラシンガーズ