萩原朔太郎「猫」、
第一詩集『月に吠える』におさめられている。
この『月に吠える』は朔太郎31歳、
大正6年・1917年に刊行された。
「おわあ」「おぎゃあ」など猫の声のオノマトペが独特。
「おわ嗚呼、ここの家の主人は病気です」
このフレーズをご存知の方も多いのでは。
『月に吠える』田中恭吉装画「夜の花」
猫
萩原朔太郎
まっくろけの猫が二疋、
なやましいよるの屋根のうへで、
ぴんとたてた尻尾のさきから、
糸のようなみかづきがかすんでいる。
『おわあ、こんばんは』
『おわあ、こんばんは』
『おぎゃあ、おぎゃあ、おぎゃあ』
『おわ嗚呼、ここの家の主人は病気です』