オペラ「沈黙」を録画で観る。
演出の宮田慶子は「演劇では台詞と台詞の行間を埋めるのが演出。
オペラでは行間は音楽で表されるので、それをヴィジュアル化する」と。
舞台には大きな十字架が楔のように突き刺さり、
回り舞台で角度をかえると難破船とも、山上ともなる。
遠藤周作の原作を村松が台本・作曲。
台詞、音程のついた台詞、歌を
それぞれのソリスト、
ひとりひとりの合唱が
自身の内奥からの声・歌・演技をして。
無調の間にある調性の「オハル」の叙情的なアリア。
高橋薫子のじつにピュアなソプラノ。
キチジロー、その弱さゆえに<転びもん>となり、
さらに裏切りを重ね、なお<神>を求める姿が哀しい。
フェレイラは黒田博。
かつて十数年、篤実な司祭であった彼が、踏み絵を踏み、
その孤絶、その絶望の果てを超えてしまった人間を歌い、演じる。
陰惨な、深い深い<闇>の声。
ロドリゴとフェレイラの対峙する場の壮絶。
牢で明日は処刑のロドリゴの聴く、
拷問の<うめき>の男声合唱の凄惨。
ロドリゴが踏み絵を踏む場では音はなく、
踏んだキリストをいだくとともに、
照明が床に十字架を描く。
下野の指揮、
東京フィルハーモニーの緻密な音。
2012年に中劇場で上演。
この時は劇場で観て、非常に感動。
http://ameblo.jp/bashouza/entry-11170690753.html
◆歌劇「沈黙」
原作 遠藤周作
台本・作曲 松村禎三
ロドリゴ(ポルトガルの宣教師): 小餅谷哲男
フェレイラ(ロドリゴの恩師): 黒田 博
ヴァリニャーノ(マカオの教会の神父): 成田博之
キチジロー(日本人の漁師): 星野 淳
モキチ(トモギ村の信徒): 吉田浩之
オハル(モキチの恋人): 高橋薫子
おまつ: 与田朝子
少年: 山下牧子
じさま: 大久保眞
老人: 大久保光哉
チョウキチ: 加茂下稔
井上筑後守(元キリシタンの長崎奉行): 島村武男
通辞: 吉川健一
役人・番人: 峰 茂樹
<管弦楽>東京フィルハーモニー交響楽団
<指 揮>下野竜也
<合唱>新国立劇場合唱団
<児童合唱>世田谷ジュニア合唱団
<合唱指揮>冨平恭平
<美 術>池田ともゆき
<衣 装>半田悦子
<照 明>川口雅弘
<演 出>宮田慶子
収録: 2015年6月27日、29日 新国立劇場 オペラパレス