
玉三郎の阿古屋が観たくて、いそいそと歌舞伎座へ。
いまの玉三郎でなければできない阿古屋を観た。
■『壇浦兜軍記 -阿古屋-』
花道の出のなんという大きさ。
まさにいま芳醇な<まことの花>の立女形。
玉三郎、まばゆいほどの奇麗なこと。
その美しさがそのまま存在の大きさになって、圧倒的。
客席もためいきが凝ったよう。
孔雀の俎板帯、
牡丹の仕掛け、
豪華な意匠をうわまわる玉三郎の豪奢なこと。
そこにちらっと見える素足が遊君である、と。
阿古屋の琴・三味線・胡弓の三曲演奏は本当に見物。
琴を弾きながらのうた、慕わしい景清への切々とした想い。
琴にあわせる太棹も息もぴったり。
玉三郎の手にぴたっとあわせて。
三味線に合わせるのは長唄三味線。
胡弓の嫋々とした音色がさらに劇的に。
義太夫は
阿古屋パート:愛太夫師、
秩父庄司重忠パート:幹太夫師、
岩永パート:泉太夫師。
インタヴューで玉三郎は
「阿古屋で琴、三味線、胡弓を弾きますが、
リサイタルではないので、演奏をするのでなく、
<阿古屋が恋人景清を想っている>、
このことを胸に秘めている、そうした阿古屋でなければ」と。
捌き役の秩父庄司重忠の菊之助。
あまり動きのない役を柔らかく、情の深い人物に。
爽やかで、なんとも二枚目。
そうした中に、人形振りの岩永左衛門があって、
アクセントになって。
この「阿古屋」、
いつまた観ることができることか。
◆壇浦兜軍記(だんのうらかぶとぐんき)
阿古屋
遊君阿古屋 玉三郎
岩永左衛門 亀三郎
榛沢六郎 功 一
秩父庄司重忠 菊之助
◆二世尾上松緑二十七回忌追善狂言
梅雨小袖昔八丈(つゆこそでむかしはちじょう)
髪結新三
さわやかな松緑の新三、
そこに老獪な大家の左團次、
ごちそうですっきりとした仁左衛門の藤兵衛、
肴売りの菊五郎の登場で劇場が華やぐ。
序 幕 白子屋見世先の場
永代橋川端の場
二幕目 富吉町新三内の場
家主長兵衛内の場
元の新三内の場
大 詰 深川閻魔堂橋の場
髪結新三 松 緑
白子屋手代忠七 時 蔵
下剃勝奴 亀 寿
お熊 梅 枝
丁稚長松 左 近
家主女房おかく 右之助
車力善八 秀 調
弥太五郎源七 團 蔵
後家お常 秀太郎
家主長兵衛 左團次
加賀屋藤兵衛 仁左衛門
肴売新吉 菊五郎
10月25日まで。