モーツァルト作曲
オペラ「ドン・ジョバンニ」を20日、NHKホールで観た。
ドン・ジョバンニのイルデブランド・ダルルカンジェロを
聴きにいった、というべきか。
ダルカンジェロのバリトンは深く、厚い声でとても強靭。
歌舞伎でいう「ニン」があって、
こんなに色っぽい、肉食獣はいないのでは、と。
直接、皮膚感覚に、心臓に刺さってくるようなバリトン。
ソット・ヴォーチェも決まる。
こんな声で歌われたら、誰でもなびいてしまう・・・
舞台姿もさすが。
ドンナ・エルヴィーラはドンに捨てられ、
なお憎みながらも愛する女性。
メゾ・ソプラノのジョイス・ディナードがさすが素晴らしい。
二幕のアリアのなんと胸にしみることか。
ツェルリーナはユリア・レージネヴァ(ソプラノ)。
軽いスーブレットの役どころだが、
レージネヴァはもっと芯のある声で、チャーミング。
ドンナ・アンナはアルビナ・シャギムラヴァ。
女声の歌手たちの競演はまさに饗宴。
声は充分に堪能したのだが、
ホルテンの演出、従来のオペラ「ドン・ジョバンニ」ではなく
ずっと心理的に深部を造形し、
そのためのプロジェクション・マッピングが多様されている・・・
指揮のパッパーノは、
序曲から、あわあわとした音で、
曲は継ぎ目なく演奏されてゆく。
ホルテン演出では、合唱がほとんど舞台にでない。
この演出だとダルカンジェロのもつ
濃い<いのち>のほとばしりといった歌はどうなのだろうか。
「もう飛ぶまいぞこの蝶々」に合わせての
食事をする晩餐のシーンは
食べ物などまったくでない。
騎士長の「審判」のあとに、
ドンナ・アンナ、オッターヴィオ、レポレロ、
エルヴーラ、ツェルリーナ、マゼットが歌う
六重唱は影コーラスかと思ったくらい。
それぞれが舞台の上手と下手に分かれて歌っていた。
<地獄落ち>のドン・ジョヴァンニだけが舞台に残り、
うずくまって、幕。
https://www.youtube.com/watch?v=uVLJE5jMYEI
◆出演
ドン・ジョヴァンニ:イルデブランド・ダルカンジェロ
レポレロ:アレックス・エスポージト
ドンナ・アンナ:アルビナ・シャギムラトヴァ
ドンナ・エルヴィーラ:ジョイス・ディドナート
ツェルリーナ:ユリア・レージネヴァ
マゼット:マシュー・ローズ
騎士長:ライモンド・アチェト
ドン・オッターヴィオ:ローランド・ヴィラゾン
◆
指揮:アントニオ・パッパーノ
演出:カスパー・ホルテン
装置:エス・デヴリン
ビデオ・デザイン:ルーク・ホールズ
合唱監督:レナート・バルサドンナ
フォルテピアノ:アントニオ・パッパーノ
ロイヤル・オペラ合唱団
ロイヤル・オペラハウス管弦楽団
◆舞台写真はこちら「ぶらあぼ」
http://ebravo.jp/archives/21126