オランピア
大野和士指揮、オペラ「ホフマン物語」を録画で観る。
大野のホームグラウンドであるリヨン歌劇場のオペラ。
いままでに観た「ホフマン物語」、最高の舞台!
今回の上演は版で、レシタティーボを台詞にし、
ステッラに「ドンジョバンニ」のアリアを歌わせる
プロローグから始まり、二幕オランピア、三幕アントニア
四幕ジュリエッタ、エピローグとなる。
「ホフマン物語」は豪華絢爛であることも多いが、
美術・衣装がモノトーンで、シンプルで品がある。
大野のいう「闇」のなかで、イマージュにより、より物語が、
なによりも<音楽>が強く立ち上がる。
メインの役のみならず、合唱の一人ひとりまでじつに達者。
オランピアを作った博士などまさにマッドサイエンティストそのもの。
台詞が多いので役者と思ったほど。
その助手のシリル・デュボア、なんと歌で「どもる」!?
ミシェル・ロジエはミューズ/ニクラウス。
別人としか思えない。ニコラウスの凛々しいこと。
ちゃんと詩人にみえるホフマンのジョン・オズボーン。
ときに声の細いこともあるが高音が素晴らしい。
すっかりファンになってしまったのが、
悪役のロラン・アルバロ。
リンドルフ/コッペリウス/ミラクル博士/ダペルトゥット
を歌うが声といい、その風貌、じつに存在感がある。
皮のコート、剃り上げた頭、黒いマニュキュァ、
不気味でなんとも魔的。
凄いのがソプラノのパトリツィア・チョーフィ。
オランピア/アントニア/ジュリエッタ/ステッラの
四役を演ることじたい驚異的。
ステッラはともかく、人形・歌手・高級娼婦がひとりの女性の
なかにいるという物語としては説得力がでる。
が、
コロラトゥーラ、リリック、ドラマティクという声種の異なるのを
ひとりのソプラノが歌うのはまさしく超絶技巧。
オランピアではコロラトゥーラの音型のようにクレーンで上下、
オーケストラピットまで出ていることも。
よくあれで歌える、と。
ダンスのシーンでは足に車(?)
三幕のアントニアの「雉鳩」のすばらしいこと。
四幕の権高で艶めいていること。
衣装・髪型がかわって出てくると同じ人とは思えない。
大野の緻密にして濃密な指揮で、
オーケストラが響き渡り
なんと密度の濃い音楽となることか。
大野の「ホフマン」への想い深さ、篤さが伝わってくる。
こんなにもすべてが統べられた「ホフマン物語」。
上演を劇場で観たかった・・・
◆「ホフマン物語」
作曲:ジャック・オッフェンバック
台本:ジュール・バルビエ
演出・衣裳:ロラン・ペリー
演出協力:クリスチャン・ラット
衣裳協力:ジャン=ジャック・デルモット
台本構成/ドラマトゥルク:アガット・メリナン
舞台:シャンタル・トマ
照明:ジョエル・アダン
ビデオ:シャルル・カルコピーノ
指揮:大野和士(フランス国立リヨン歌劇場首席指揮者)
◆キャスト
ホフマン:ジョン・オズボーン
オランピア/アントニア/ジュリエッタ/ステッラ:パトリツィア・チョーフィ
リンドルフ/コッペリウス/ミラクル博士/ダペルトゥット:ロラン・アルバロ
ミューズ/ニクラウス:ミシェル・ロジエ
アンドレ/コシュニーユ/フランツ/ピティキナッチョ:シリル・デュボア
ルーテル/クレスペル:ピーター・シドム
ヘルマン/シュレーミル:クリストフ・ガイ
ナタナエル/スパランツァーニ:カール・ガザロシアン
アントニアの母:マリー・ゴートロ
合唱指揮:アラン・ウッドブリッジ
合唱:フランス国立リヨン歌劇場合唱団
管弦楽:フランス国立リヨン歌劇場管弦楽団
2014年7月 オーチャードホール