俳人堀本 吟さんが「月球儀」6号を取り上げ、
丁寧な読み、評を書いて紹介をしてくださいました。
堀本 吟さんは俳句作品、
短詩型への思索、探求。評論を書く。関西在住。
◆話題性富かな「月球儀第六号」
山本掌さんの個人誌、俳句が中心であるが、
非常にユニークな編集でありこれ一冊で
充分文学芸術の小宇宙を逍遥できる。前橋市在住。
目次を追ってゆくと
表紙、装丁は 「月球儀少女」 典雅な少女像(伊豫田晃一)が美しい。
①写真家小松健一の写真と文 で、
「見果てぬ夢よ、風よ。雲よ《探検家矢島保次郎》 」
郷土の足跡をたどり、チベット行 現地風物、人物像の写真掲載。
生き生きした村人や、修行僧、 険しい山岳。
この秘境にゆき、チベット貴族の娘と結婚した、矢島保次郎。
民間人として、みごとな国際交流をはたした。と小島は書く。
②【特集 俳句の愉しみ、俳句を読み詠む】
ここでは、まず《萩原朔太郎の俳句》紹介。
朔太郎の俳句は初めて読んだ。決して上手とは言えないが、
寄稿者の清水哲男が褒めているのは次の句。
人間に火星近づく暑さかな。朔太郎〉
私の好きな句は.前書のある次の句。
〈わが幻想の都市は空に有り〉
虹立つや人馬賑ふ空の上・朔太郎〉。
「都市」という場へのあこがれは、ここでは、
近代のものというより、
古来から継がれている渇仰、
「祝祭空間としての未来」への憧れみたいなものなのではないだろうか?
そういう気分が現れていて好きである。
ふと思い出したが、網野善彦の文。
司修の絵『河原にできた中世の町ーへんれきするひとびとのあつまるところ』(岩波書店)
河原、中洲、虹はあの世とこの世の境界の位置のもの。
ひとびとはそこに市をたてた。
《山本掌 の句を金子兜太、池田澄子、鳴戸奈菜などが鑑賞》。
《句友「たかはししずみ」などの俳句を 掌が鑑賞》
③
《うたい語る「おくのほそ道」》(野澤美香作曲。
私があまり知らない芭蕉の解読。
掌さんは、メゾソプラノの声楽家なのである。
④山本掌の俳句
《非在の蝶》 40句
春銀河曖昧母音くりかえし 掌
《蝶を曳く》 19句
初蝶の過ゆくまでは石でいる
月球儀おそらく分母は蝶である
自意識のうちがわから宇宙まで、
自在に自意識のうちがわから宇宙まで飛ばせている、
華麗なナルシシズム。
編集から作品まで一貫して
一種マージナルな世界への眼差しを感じる。