芭蕉、加賀の国に至る。
多太八幡の神社参拝し、
齋藤実盛(さねもり)の甲(かぶと)を拝見する。
むざんやな甲のしたのきりぎりす 芭蕉
<なんと痛ましいことよ。
討死した実盛の甲だけがここに留められ、
その下でか細く鳴く蟋蟀(こおろぎ)の声を聞いていると、
悲痛の思いに旨が疼(うず)く>
謡曲「実盛」の語を借りて、
実盛愛惜の心情を表白した。
新潮日本古典集成「芭蕉文集」より
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<蟋蟀(こおろぎ)・ちちろ・ちちろむし>
コオロギ科のツヅレサセコオロギ、エンマコオロギ、
ミツカドコオロギ、オカメコオロギなどの総称。
古くは「きりぎりす」といった。
秋の季語。
歳時記にあるように、
古くは[コオロギ」のことを「キリギリス」といった。
この句のキリギリスはコオロギ、と。
とてもまぎらわしい(笑)。