オペラ「湖上の美人」 @ BS | 「月球儀」&「芭蕉座」  俳句を書くメゾソプラノ山本 掌のブログ

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第四句集『月球儀』
「月球儀」俳句を支柱とした山本 掌の個人誌。

「芭蕉座」は芭蕉「おくのほそ道」を舞台作品とする
うた・語り・作曲・ピアノのユニット。
    



俳句を金子兜太に師事。「海程」同人・現代俳句協会会員。

湖上の美人 エレナ

   ティドナート


録画しておいて、今回初めて観たオペラ。
13年5月27日にコヴェントガーデンで上演された。

 
◆ロッシーニ:歌劇「湖上の美人」

指揮:ミケーレ・マリオッティ、
演出:ジョン・フルジェームズ

ジョイス・ディドナート(エレナ)、
ファン・ディエゴ・フローレス(スコットランド国王、ウベルト)、
ダニエラ・バルチェッローナ(マルコム)、
シモン・オルフィラ(エレナの父ダグラス)、
コリン・リー(ロドリーゴ)

2013年5月27日 コヴェントガーデン歌劇場 


ドラマはおいといて(笑)、
ロッシーニのこれでもかというコロラトゥーラの競演。

フローレスは、甘いマスクに、軽妙で明るいクリアな声。
ディドナートはとても個性的。

コロラトゥーラの技巧は、生身の肉体を駆使して
あのトリルを声でやるのは凄い。
文字通り「声の技巧」であっても、
音楽的な<内奥>を感じることが少なくて、
あまりロッシーニを好んで聴かなかった・・・


湖上の美人Ⅱ マルコス

         ダニエラ・バルチェッローナ(マルコム)、


みごとな歌唱を聴かせてくれた主役二人の、
さらに上を行っていたのがダニエラ・バルチェローナ。
長身で厚みのあるがっしり体型は、
メゾソプラノ(ズボン役)であっても、
男の中の男、兵士の中の兵士といった風情で
じつに凛々しく、この技巧的な歌に
くっきりと<人間>を造形していた。



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◆湖上の美人 La donna del lago

ロッシーニ Giaocchino Rossini(1792-1868)

台本:伊語/アンドレア・レオーネ・トットーラ

原作:ウォルター・スコット「湖上の美女」

初演::1819年10月24日、サン・カルロ劇場(ナポリ)

設定::スコットランド

上演時間: 2時間15分

楽器編成:
2Fl(Pic),2Ob,2Cl,2Fg/4Hr,2Tp,
3Tb/Timpani,BD,Cym,Tgl/Hp/Str
Onstage:6Hr/Band with Trumpets

ロッシーニのイタリア・オペラの中でもっともロマンティックなオペラ。
スコットランドの作家スコットの作品は後に頻繁に
イタリアオペラの題材になった、その最初の例。
入り組んだ音楽の書法で、大管弦楽が充実した音楽を表現している。
ウベルトはhi-Dを要求される。

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  <第1幕>

第1場 カトリーヌ湖のほとり。

エレナの父ダグラス卿は国王に背いた反乱軍の貴族で、
今はその反乱軍の首領ロドリーゴのところに身を寄せている。
そしてダグラス卿は娘のエレナをロドリーゴの嫁にする約束をしている。
しかし当のエレナは同じ反乱軍の騎士マルコムと愛を誓い合った仲だった。
狩猟に出かけた王家の人々が通り過ぎた後、
湖にエレナを乗せた一艘の小舟が静かに現れ、エレナは「夜明けの歌」を歌う。
遠く角笛の音が聞こえ、エレナは恋人が近くに来たと胸をはずませる。
そこに狩人ウベルトに変装した国王ジャコモ五世が現れ、
エレナに「休む場所はないか?」と尋ねる。
エレナは自分の家に招くために彼を船に乗せる。

第2場 エレナの家

狩人ウベルトことジャコモ五世は、
エレナに案内された家が反乱軍の一味である
ダグラス卿の家であることに気付く。
また、エレナが反乱軍の首領ロドリーゴと結婚することを知る。
さらにエレナの憂鬱な表情から、その結婚を望んでいないことも知る。
しばらくしてウベルトはエレナに礼を言い立ち去り、エレナも部屋に戻る。
入れ替わりにマルコムがやって来る。
マルコムはエレナへの想いを歌う。「エレナ、君を呼びにきたのだ」。
そこにセラーノが現れ出陣を告げる。
ダグラス卿とエレナが二人で現れ、マルコムは身を隠す。
ダグラス卿はエレナにロドリーゴと結婚してスコットランド女王になれと強く言うが、
エレナはマルコムをどうしても忘れられない。
ダグラス卿がロドリーゴを迎えにその場を立ち去るとマルコムが姿を現し、
エレナと熱愛の二重唱を歌う。

第3場 谷間

首領ロドリーゴ率いる反乱軍が山の谷間に集結している。
兵士達は志気を鼓舞する合唱を勇ましく歌う。
ダグラス卿とエレナも姿を現す。
ロドリーゴはエレナに甘い愛の言葉をささやくが、
エレナの心は沈むばかりである。
マルコムが現れるが、エレナがロドリーゴと結婚すると聞くや激しく怒り、
ロドリーゴに決闘を申し込む。
しかしその時、王の軍隊が攻めてきたとの知らせが届き、
二人は戦場へ急ぐ。



<第2幕>

第1場 エレナの家の近くの森

反乱軍は戦いに敗れ、森の中の洞窟に再結集している。
エレナをどうしても忘れられないジャコモ五世は、
再び狩人のウベルトに変装して現れる。
「おお、甘美なる炎」。
ウベルトは激しく愛を告白するが、
エレナは頑なまでにそれを受け付けない。
しかしウベルト(ジャコモ五世)は愛の証として彼女に指輪を渡し、
もしものときはこの指輪を国王に見せれば国王が救ってくれるだろうと言う。
そこに反乱軍の首領ロドリーゴが現れ二人が一緒にいるところを見て嫉妬する。
そしてウベルトが国王軍の人間であることを見破り、
エレナが必死に止めるのも聞かずに、
互いに剣を抜き決闘すべく立ち去る。
間もなくロドリーゴが負けたという知らせが届く。

第2場 ジャコモ五世の王宮

国王ジャコモ五世は反乱軍を制圧し、
ダグラス卿も捕らわれて国王の前に連行される。
ダグラス卿は許しを請うが、国王は厳罰に処す。
そこに国王の指輪を持った娘の来訪が伝えられる。
国王ジャコモ五世はその場にいた人々を退出させ、
自らも自室に戻る。エレナが一人入ってくると、
突然竪琴が響き、
かつてエレナが湖上で歌っていた「夜明けの歌」が聞こえ、
狩人姿のウベルトが現れる。国王とは気が付かないエレナは、
ウベルトに父ダグラス卿や恋人マルコムの助命を
国王に取りなして欲しいと願う。
ウベルトはエレナを優しく玉座に導き、
自らが国王ジャコモ五世であることを打ち明ける。
そして指輪の約束通り、父ダグラス卿は救うが、
マルコムは反逆罪で処刑されると告げる。
国王はエレナに自分の愛を受け入れるように言うが、
エレナは深く悲しむ。その姿を見た国王ジャコモ五世は、
遂に自らの愛を諦め、マルコムも許し、
さらにエレナと結婚してダグラス卿の領地を継ぐことを認める。
エレナの歓喜の歌「この素晴らしき瞬間に豊かな愛情が」で幕となる。