オペラ「ヴォツェック」を観た!
アルバン・ベルク作曲、
20世紀を代表するオペラ。
新国立劇場では09年、初演。
このとき賛否両論のプロダクションの再登場。
ベルクを日本で観られる!という感しきり。
舞台全面に水があり、
屋内の場面はそのうえに前面に矩形の空間。
ここが大尉の髭を剃ったり、
ヴォツェックとマリーの棲む家や
人体実験の場になる。
美術・衣装ともおさえた色彩、
壁は灰色、カーキの軍服、
マリーの砂色の衣装、兵隊など鉄色。
ヴォツェックのニグル、マリーのツィコーワの
この無調(ときおり調性)をなんと緊密に、
緊迫感をもって歌い、演じることか。
医者の妻屋秀和もほとんど異形。
ヴォツェックにはこんなふうに見えているに違いない。
マルグリートの山下牧子。
このクリーゲンブルグの演出では
ほぼでずっぱりの子供。
ギリシャ劇のコロスのような合唱。
合唱もあるが、劇のなかで形態をかえ、
主人公を追いつめたり(マットを持って立つ後姿の不気味なこと)
マリーを殺すところでナイフを研でいたり、
バンダ(楽団)で踊ったり、とじつに優れている。
水がときにオーケストラピットの上まで、
水陽炎のようにゆらめいて。
この陰惨ともいえるオペラ、
狂気におちいる、追い詰められる男をとおして、
現代に生きてあることを鋭く抉る。
すごいものを観てしまった。
「ヴォツェック」新国立劇場 ホームページ
「ドイツ演劇界の鬼才クリーゲンブルクが描き出す心突き刺さる
現代ドラマ「ヴォツェック」がいよいよ開幕いたします。
愛する家族のために必死で生きようとする貧しい兵士ヴォツェックは、
彼を取り囲む暴力的で冷酷な社会に追い詰められ、
ついに家族、そして自分をも滅ぼす。
社会の底辺の貧困の中に生きる人々の悲劇を主人公ヴォツェックの視点から描き、
大絶賛を博したクリーゲンブルク演出による衝撃的な「ヴォツェック」が待望の再登場です。
本作品は世界の歌劇場で人気レパートリーとなっている数少ない20世紀オペラのひとつで、
ベルクの音楽は精緻で美しく引き込まれずにはいられません」。
<新国立劇場オペラ公演「ヴォツェック」公演概要>
【全3幕/ドイツ語上演/字幕付】
作曲 : アルバン・ベルク
指揮 : ギュンター・ノイホルト
演出 : アンドレアス・クリーゲンブルク
出演
ヴォツェック=ゲオルク・ニグル
鼓手長=ローマン・サドニック
大尉=ヴォルフガング・シュミット
医者=妻屋秀和
マリー=エレナ・ツィトコーワ
マルグレート=山下牧子 ほか
合唱 : 新国立劇場合唱団
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団