2013年ザルツブルグ音楽祭のハイライトというべきオペラ。
2・3週間で放映されるのも素晴らしいこと。
今回の上演はイタリア語、5幕版。
フォンテンブローの森の場があるため、
ドンカルロとエリザベッタが婚約し
愛し合っていながら、
父国王の王妃となるという悲劇がより鮮明になる。
なんといってもドン・カルロ:カウフマンの輝かしく強い声、
濃い容貌もスペイン王子にふさわしい。
エリザベッタ:ハルテロスの﨟たけた美貌と美声、
揺れ動く心情があますところなく歌われる。
男性の二重唱、ロドリーゴ:ハンプソンとドンカルロの友情・信頼、
(プラス妖しさがほしかった・・・)
国王:ザルネミン、権力・権高な<王>より、
王妃の愛を得ることのできない老いをかかえた人間を感じさせる。
エボリ公女:セメンチュクの強靭な声、
この声で「呪われた美貌」と歌われると、そうでしょうと納得(笑)。
出番は少ないが強烈な存在感の大審問官:
演出は音楽を損なわない自然な流れ。
パッパーノの指揮がウイーンフィルを鳴らしに鳴らす。
さすが充実の4時間強。
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ヨナス・カウフマン
ヴェルディの生誕200年を記念して上演され
2013年のザルツブルク音楽祭のハイライトとなった
オールスター・キャストによる「ドン・カルロ」。
ドイツの大御所ペーター・シュタインによるオーソドックスな演出、
舞台装置、衣装、照明は、どれをとっても不自然さは皆無。
ヨナス・カウフマン、アニヤ・ハルテロス、トーマス・ハンプソンを始めとする
歌手陣は言うまでもなく最高の顔ぶれ。
イタリア語による5幕版と言うのも嬉しいところ。
「やはりこの作品には(4幕版ではカットされた)フォンテンブローの森の場面が
必要」と指揮者パッパーノも力説しています
(パッパーノにとっては、コヴェント・ガーデンでの
上演の映像以来2種類目の「ドン・カルロ」となります)。
もちろん、カウフマンのカリスマ性はこの舞台でも遺憾なく発揮されており、
彼が舞台に現れるだけで全体がぴりりと引き締まるのが素晴らしい。
例えば、このオペラの見せ場の一つである
ドン・カルロとロドリーゴの二重唱「われらの胸に友情を」では、
最初、跪いたハンプソンとカウフマンがやがて立ち上がり、
手を取り、向かい合い、思いの丈をこれでもかと歌い上げていく。
この緊張感と高揚感、そして少しばかりの妖しい雰囲気は
この2人でないと出せないでしょう。
パッパーノの流麗な音楽作り、
そしてウィーン・フィルの濃密な響きは、
凡庸な指揮者の手にかかると短調になりがちな
ヴェルディの音楽を存分に楽しませてくれます。(ソニーミュージック)
ヴェルディ:歌劇《ドン・カルロ》(イタリア語5幕版全曲)
【出演・演奏】
ヨナス・カウフマン(T:ドン・カルロ),
マッティ・ザルミネン(Bs:フィリッポ2世),
アニヤ・ハルテロス(Sp: エリザベッタ),
トーマス・ハンプソン(Br:ロドリーゴ侯爵),
エリック・ハルフヴァーソン(Bs:宗教裁判長),
ロバート・ロイド(Bs: 修道僧&カルロス5世),
エカテリーナ・セメンチュク(Ms:エボリ公女),他,
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団,
ウィーン国立歌劇場合唱団,
アントニオ・パッパーノ(指揮)
【演出】ペーター・シュタイン
【舞台装置】フェルディナント・ヴェガーバウアー
【衣装】アンナマリア・ハインリヒ
【照明】ヨアヒム・バルト
【振付】リア・ツォラキ
【収録】2013年8月, ザルツブルク祝祭大劇場(ザルツブルク音楽祭でのライヴ)
ヨナス・カウフマン