塚田佳男 日本歌曲公開レッスン @ 前橋F邸 | 「月球儀」&「芭蕉座」  俳句を書くメゾソプラノ山本 掌のブログ

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第四句集『月球儀』
「月球儀」俳句を支柱とした山本 掌の個人誌。

「芭蕉座」は芭蕉「おくのほそ道」を舞台作品とする
うた・語り・作曲・ピアノのユニット。
    



俳句を金子兜太に師事。「海程」同人・現代俳句協会会員。

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日本歌曲の第一人者、

塚田佳男先生の公開レッスンが行われた。


塚田先生、

この日の午後ご自分のコンサートで

演奏され、その足でレッスンに臨まれた(!?)

この日は<高津圭>としての活動。


高津圭は塚田佳男の別名。

<うた>での演奏の時はこの名前。

じつは芸大の学生のころは「声楽科」、

さらに二期会の研究生にすすまれたのだが、

ピアノへのおもい止みがたく、

次の週には二期会でピアニストになっていた!?

で、その後の活動はうたのピアニストとして、

カーネギー・ホールでのコンサートで

あの辛口のニューヨーク・タイムズに

「完成されきったピアニスト・芸術家」と。


あの安田姉妹の童謡のコンサート企画・ピアニストを

長くされていた。


還暦ころから、

<うた>われるようになって、

CDも数枚だされている。

レッスンに伺って、

そのCDを頂戴したのだが、

「聴かなくてもいいから」、と。



今回は委嘱作品の一番新しい(昨年のクリスマス)、

句 松尾芭蕉、曲 野澤美香

「むざんやな甲の下のきりぎりす」、

と「木兎(みみずく)」。

「むざんやな」をさきにもってきたのは、

音の構成、和音、変拍子など、

歌うのに使う頭のありようがあまりに異なるので、

この曲から。

いままでの傾向から新たな境地になって、

「俳句」がみえてくる、よう。


「木兎」詩 三好達治、曲 中田喜直。

若いころから、とても好きな曲。

どちらかというと「男声」の曲なのだが。



「十年の月日がたった、

その間にわたしはなにをしてきたか、

・・・・

わたしのしてきたことといえば、

一つ一つ希望を失った、

ただそれだけ

・・・」


じつにきめ細かく、

さらにかっちりとした構成に!


充実したレッスンを受けた。






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  木兎(みみづく)

                      三好達治

木兎が鳴いてゐる

ああまた木兎が鳴いてゐる

古い歌

聴きなれた昔の歌

お前の歌を聴くために

私は都にかへつてきたのか・・・

さうだ

私はいま私の心にさう答へる


十年の月日がたつた

その間に 私は何をしてきたか

私のしてきたことといへば

さて何だろう・・・

一つ一つ 私は希望をうしなつた

ただそれだけ


木兎が鳴いてゐる

ああまた木兎が鳴いている

昔の聲で

昔の歌を歌つてゐる


それでは私もお前の眞似をするとしよう

すこしばかり歳をとつた この木兎もさ


   

       「定本 三好達治全詩集」 筑摩書房版より