俳句を読む Ⅵ @「海程」492号「鬱」の句。 鬱の夜の度に寒禽砂となり たかはししずみ 「鬱」、これといった理由もなく、気持ちが沈んでくる。 落ち込んでいくのはわかっていて、 とめどなく暗い気持ちにのめりこんでゆく。 その鬱、鬱そのものが「寒禽」であり、 その羽根が、その嘴が、さらさらとさらさらと「砂」になる。 一句、心象の表現であって、 鬱の夜のありようがなんと美しく、 哀しいほどの寒禽の立ち姿であることか。 鬱の癒えた昼、この寒禽はその姿を顕すにちがいない。