俳句を読む Ⅵ  @「海程」492号 | 「月球儀」&「芭蕉座」  俳句を書くメゾソプラノ山本 掌のブログ

「月球儀」&「芭蕉座」  俳句を書くメゾソプラノ山本 掌のブログ

第四句集『月球儀』
「月球儀」俳句を支柱とした山本 掌の個人誌。

「芭蕉座」は芭蕉「おくのほそ道」を舞台作品とする
うた・語り・作曲・ピアノのユニット。
    



俳句を金子兜太に師事。「海程」同人・現代俳句協会会員。


「鬱」の句。





   鬱の夜の度に寒禽砂となり      たかはししずみ




「鬱」、これといった理由もなく、気持ちが沈んでくる。

落ち込んでいくのはわかっていて、

とめどなく暗い気持ちにのめりこんでゆく。

その鬱、鬱そのものが「寒禽」であり、

その羽根が、その嘴が、さらさらとさらさらと「砂」になる。

一句、心象の表現であって、

鬱の夜のありようがなんと美しく、

哀しいほどの寒禽の立ち姿であることか。

鬱の癒えた昼、この寒禽はその姿を顕すにちがいない。