松田権六「蒔絵竹林文箱」
寿ぎの「うつわ」展を観に東京国立近代美術館 工芸館へ。
チラシの表紙になっている松田権六「蒔絵竹林文箱」。
みごとな文箱。黒地に金彩で竹の文様が繰り返され、
このリズムが心地よい。
小鳥の愛らしいこと。
横の面は黒地に小鳥が飛んでいる。
松田作品は「蒔絵玉すだれ文盤」、
茶室には「螺鈿桜紋椀」がおかれ、
仕事部屋が実寸で再現され、
じっさいに使っていた道具が整然と並べられて。
増村益城「乾漆梅花食籠」、
落ち着いて華やぎの朱のいろと造形の美しさ。
高野松山「牡丹木地蒔絵手箱」などなど、
館が所蔵している作品が展示されている。
そこここにおかれている椅子、
これもラタンできた作品だが、
腰掛けてもいいというのがうれしい♪

工芸館の建物は旧近衛師団司令部庁舎を
保存、使用している。
http://www.momat.go.jp/CG/architecture.html
◆工芸館ホームページより
空気に触れると固まり、堅牢な塗膜となる不思議な液体―漆。
漆は、ウルシの木から採取される樹液ですが、
乾くと固まるという性質を利用して、
芯材に木や麻布を用いたり、
また塗面に金銀粉等を蒔きつけて華やかに装飾するなどして、
古くからさまざまに活用されてきました。
本来液体である漆は、それ自身では確固とした形をもたない存在で、
漆単独で形を成すというよりも、
他の素材と結びついて新しい姿形を獲得する、
「触媒」のような役割を果たしている素材といえます。
強固な保護膜となって器を長持ちさせるという漆の実用面もさることながら、
さらにひと手間もふた手間もかけて、
作り手たちが形や表面の装飾の美を極めていくのはどうしてなのでしょうか。
そこには、完成した漆工芸品がどのように用いられてきたかという、
使い手側の事情もあるようです。
現代でも、新年のお祝いをはじめ、
特別な席で漆器が用いられる場面を見かけます。
「ハレ」の場を演出する道具として、
またおもてなしの気持ちを伝える器として、
とりわけ漆器が好んで用いられてきました。
今なお、漆は私たちの生活のなかで「特別な場所」を占めている、
そんな素材といえるのかもしれません。
本展では、漆という素材に脈々と継承されてきた文化的な特質を
「寿ぐ」というキーワードで捉え、
こうした視点からあらためて当館の所蔵作品約100点で、
近現代の漆工芸を考えてみたいと思います。