オペラ「ピーター・グライムズ」 @ 新国立劇場 | 「月球儀」&「芭蕉座」  俳句を書くメゾソプラノ山本 掌のブログ

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第四句集『月球儀』
「月球儀」俳句を支柱とした山本 掌の個人誌。

「芭蕉座」は芭蕉「おくのほそ道」を舞台作品とする
うた・語り・作曲・ピアノのユニット。
    



俳句を金子兜太に師事。「海程」同人・現代俳句協会会員。


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10月5日(金)

オペラ「ピーター・グライムズ」

ベンジャミン・ブリテン作曲を観た。


素晴らしい舞台!!

これに尽きる。


ピーターを歌ったテノール、

スケルトンの輝くような<声>、

まさに現代を代表するヘンデルテナー。

ピュアーなものがありながら、無骨で、

ともすると粗暴で、少年虐待の嫌疑をうけたまま、

村人のなかから孤立してしまう。


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一幕のクラリネットが繰り返しの音形のもと

さらに心理状態のゆらぎがくっきりと立ち上がる。


三幕、なんとオーケストラが一音も発せず、

影コーラスがあるだけで、

延々とピーターが歌う!?

こんなのありか、というブリテンの書法。


これに拮抗・対峙するエレン役の

グリットン(リリック・ソプラノ)。

ピーターに思いを寄せながらも

どこか信じきれないような。


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このふたりのみならず、

各役このひとの他は考えられないといえるほどの充実。

日本人歌手たちのなかでも嫌味なセドリー夫人(加納悦子)、

姪(?)の鵜木絵里・平井香織がいい。


ピーターをその自覚もなく追いつめてゆく、村人達。

合唱が圧倒的な存在を示す。


少年(おびえながら、死んでゆく)も忘れがたい。

アームストロングの指揮による

東フィル、劇的な緊張・集中が満ち満ちて。


デッカー演出はくっきりとこの暗い、

人間の心理・存在の内奥に潜むものまでを

視覚化し、人間のドラマとなり、

マクファーレンの美術がそれを具体化し、顕彰する。


荒涼とした海の情景、

曇天の寒々とした照明、

ステージを奥行きを深くし、奥に海。

かなりの傾斜した舞台(通称八百屋)。

衣装も白黒、そこに赤。

酒場の壁、少年のセーター、

村人のダンスのときのドレス。

血が滴り落ちたよう、どきっとする。


シーズンの最初にこのオペラを

上演した尾高忠明にブラーボ!


フォイエにはブリテン関連の資料や写真を展示。

10月14日、最終日。



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【物語】
イギリス東部の漁村。

徒弟の死亡事件について漁師ピーター・グライムズの裁判が行われている。

判定は事故死となるが、村人は疑惑の念を持つ。

女教師エレンだけは彼の味方をし、

新しい徒弟の少年をグライムズの元に連れてくる。

やがて、エレンは少年に傷があることに気づきグライムズを問いただすが、

グライムズは彼女を殴ってしまう。


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これを聞いた村人がグライムズの小屋に押し寄せたため、

グライムズは少年に海へ崖を降りるように命令、

少年は足を滑らせ死ぬ。

数日後、少年のセーターが岸に流れ着く。

グライムズが人殺しだという噂が広まり村人が捜索する中、

バルストロード船長が正気を失ったグライムズに

沖に出て船を沈め自殺するよう勧める。

翌朝、沈没船の知らせが村に届くが、人々は関心を持たない。



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【配役】
ピーター・グライムズ:スチュアート・スケルトン

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エレン・オーフォード:スーザン・グリットン

バルストロード船長:ジョナサン・サマーズ

アーンティ:キャサリン・ウィン=ロジャース

姪1:鵜木絵里/姪2:平井香織

ボブ・ボウルズ:糸賀修平

スワロー:久保和範

セドリー夫人:加納悦子

ホレース・アダムス:望月哲也

ネッド・キーン:吉川健一

ホブソン:大澤 建


【演出】
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ウィリー・デッカー


【美術・衣装】

ジョン・マクファーレン




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【演奏】

リチャード・アームストロング指揮

東京フィルハーモニー交響楽団

新国立劇場合唱団



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