<夜の部>は千秋楽に。
「鈴ヶ守」、
「口上」、
「鏡獅子」、
「ぢいさんばあさん」。
「鈴ヶ森」は勘三郎と吉右衛門の共演が話題。
はかなげな美少年という役柄もあってか、
ふと勘三郎丈、だいじょうぶかしら、などと。
さてお次はいよいよ新勘九郎襲名の「口上」。
幕が上ると役者がずらりと並ぶ。
これを観るだけで華やぎが劇場中に満ちてくる。
先輩、親戚のあたたかい眼差し、
慈しみを感じさせる口上にも
それぞれの役者の柄がにじむ。
お待ちかね、「鏡獅子」。
うれしいのは老女に小山三丈。
93歳現役役者。
中村屋の長老にしてアイドル!
「あたし老け役はしないの」と言っておられたが、
手塩にかけた<勘九郎>へのはなむけ、か。
もう小屋中が沸く。
老女に手を引かれて、
弥生・勘九郎の出、じわがきたか。
まさに花も恥らう楚々とした乙女。
その手のひとさし、ひとさしのたおやかなこと。
清楚にして、凛冽。
この間に照明ではなく舞台が
一閃、ひかり輝いたのを観た。
踊りが興にのり、
獅子頭を手にし、
獅子の精に突き動かされて花道に。
観客ひとりひとりが身をのりだすよう。
胡蝶の舞も愛らしく。
獅子になっての出。
牡丹に戯れ、
胡蝶と遊ぶ。
そして毛振り。
躍動感、あふれる。
勇壮にして、絢爛。
まさに<新勘九郎誕生>。
後見に七之助。
じつに健闘。
床のうた、笛、三味線、鼓、太鼓の
演奏がまたすばらしく、冴え渡る。
もうもう大拍手。
できるものなら何年後かに丈の「鏡獅子」を
観てみたい。
<夜の部>
一、御存 鈴ヶ森(すずがもり)
幡随院長兵衛 吉右衛門
東海の勘蔵 彌十郎
北海の熊六 錦之助
飛脚早助 家 橘
白井権八 勘三郎
二、六代目中村勘九郎襲名披露 口上(こうじょう)
勘太郎改め勘九郎 幹部俳優出演
三、新歌舞伎十八番の内 春興鏡獅子(しゅんきょうかがみじし)
小姓弥生後に獅子の精 勘太郎改め勘九郎
胡蝶の精 玉太郎
同 宜 生
用人関口十太夫 亀 蔵
家老渋井五左衛門 家 橘
四、ぢいさんばあさん
美濃部伊織 三津五郎
宮重久右衛門 扇 雀
宮重久弥 巳之助
妻きく 新 悟
戸谷主税 桂 三
石井民之進 男女蔵
山田恵助 亀 蔵
柳原小兵衛 秀 調
下嶋甚右衛門 橋之助
伊織妻るん 福 助