過去2回の記事でテッド・ウィリアムズが提唱した【アップスイング】を紹介し、その合理性を語った。
その舌の根も乾かぬうちに、こんなことを言うのもなんなのだが、打ち方っていろいろなんだよね。
この記事にも書いたが、球史に名を残す超一流バッターにはアップスイングの人もいれば、レベルスイング、ダウンスイングの人もいる。
僕自身は投球線に沿って少しアップに振りライナーを打つことが好結果につながりやすいと感じるが、人によっては必ずしもそうではない。
そもそも、スイング軌道は打撃を構成する一要素でしかないし、体の使い方の結果でしかないとも言える。
グリップを体幹から離さずに「く」の字でスイングすれば、斜めに回る肩が作るスイング面は水平の投球線に沿ったものとなり、さらに上半身をキャッチャー側に傾ければ下向きの投球線に沿ったものとなる。
これは「打撃のエッセンス(8) 投球線とスイング面」で書いた通りだが、上半身の傾き加減やグリップが体幹から離れるタイミングによってスイング軌道なんて簡単に変わってしまう。
人によってやり方はいろいろだから、一流バッターでもスイング軌道は十人十色なのだ。
そして、最近、あることに気づいてしまった。
【アップスイング】には致命的な欠点がある。
それはスイング面の位置を間違えるとタイミングが合っていても空振りしやすいということ。
投球線に沿ってスイングするとスイング面は投球線と平行になるので、振る場所を間違えると投球線とスイング面はどこまで行っても交わらない。
これがレベルやダウンといった投球線と点で交わるスイングなら、タイミングさえ合わせればミートできる。
「打撃はタイミング」と言われるのはそのためだ。
レベルやダウンスイングでは、速球に対してタイミングが早すぎればボールの下を打ってフライになるし、タイミングが遅れればボールの上を打ってゴロになる。
アップすぎるスイングはこの逆だ。
しかし、投球線と平行な【アップスイング】は、タイミングが完璧でも振る場所が少し違うだけでボールに当たらない。
タイミングを合わせるのが得意なバッター(一般的にこういうバッターが好打者と言われる)にしてみれば、タイミングが合っても空振りするリスクを負うよりも、タイミングさえ合えばミートできるスイング軌道を(無意識に)選ぶのは理にかなっている。
【注意】ここで言う「タイミング」とは一般人が考えるものとは違い、ほぼ「感覚」です。「タイミングが早い/遅い」はインパクトゾーンで言うと30cmほどの距離。130km/hのボールが30cm進むのに要する時間は0.0083秒。人間の瞬きは0.3秒。打撃の「タイミング」は真剣に野球をやった人間にしかわからない「感覚」です。
そう考えると、次のように推測できる。
【アップスイング】にしてブレイクしたジャスティン・ターナーやJ.D.マルティネスは、タイミングを合わせて点で打つ能力がMLBレベルとしては低かったのではないだろうか?
そんなバッターが投球線に沿って線で打つスイングに変えた。
すると、たとえミート率が下がったとしてもライナー性の当たりが増え、ボールとバットの中心衝突により打球速度が速くなって、ヒット、特に長打が激増した。
ターナーのスイング軌道(出典:MLB.com)↓
マルチティネスのスイング軌道(出典:MLB.com)↓
今回はMLBでの話だったが、どんなカテゴリーでも、レベルやダウンスイングで打ち損じが多いバッターは微妙なタイミング調整が苦手なのかもしれないので、【アップスイング】にすれば、その欠点を補って余りある効果が得られるかもしれない。
うーん、次回こそは本題に入りたい。

