2020年はリーグ最下位に沈み、2021年シーズンは巻き返しを求められる東京ヤクルトスワローズ
今シーズン課題となった打撃力強化に向けて、今オフは既に今季パイレーツでプレーしたホセ・オスナ内野手を獲得していますが、「外国人野手はパワー優先の考え方に戻す」という球団幹部の発言を考えれば、更なる外国人野手獲得が期待されていました。
そんな中で12月3日、今季クリーブランド・インディアンスでプレーし、メジャー通算77本塁打を放ったドミンゴ・サンタナ外野手を獲得したと発表しました。
ヤクルトが通算77発インディアンス・サンタナ獲得(日刊スポーツ)
ヤクルトは3日、新外国人としてドミンゴ・サンタナ外野手(28)を獲得したと発表した。
1年契約で、年俸100万ドル(約1億500万円)プラス出来高。背番号は「25」に決まった。
球団を通じ「2019年にシアトルマリナーズの一員として来日して以来、ずっとNPBでのプレーを思い描いていました。球団の熱心なお誘いに、謙虚にかつ自信をもって、スワローズの勝利に貢献できるよう臨みたいと思っています」とコメントを発表した。
サンタナはドミニカ共和国出身で196㎝、105㎏、右投右打。17年に30本塁打をマークし、19年にも21本塁打を放っており、通算77発の長距離砲。
球団は右翼手のポジションを考えており、奥村編成部国際担当部長は「守備はもうちょっと頑張らなくちゃいけないと思う。現場からの声も、圧倒的パワーのある選手を一人ほしいということだったので、パワー、飛距離に特化した選手ということで加入しました」と経緯を説明した。
またサンタナが日本球界に以前から興味を持っているという話があり、「彼が日本でやってみたいという情報を割と早いときから知っていた。調査をしたり、いろいろ研究して見ていたんですけど、無事に収まってよかった」と話した。
すでにホセ・オスナ内野手の獲得が決定しており、外国人の野手2人体制となる。奥村編成部国際担当部長は「お互いいいところを出せれば、いい打線組めるんじゃないですか」と期待していた。
今回はヤクルトが獲得したドミンゴ・サンタナ外野手について紹介します。
メジャー通算77本塁打 17年30本塁打、19年21本塁打を記録する長打力が武器
ドミンゴ・サンタナはドミニカ共和国・サントドミンゴ出身の28歳。右投右打の外野手です。
2009年3月にフィラデルフィア・フィリーズと契約し、プロ入り。ルーキーリーグでプロデビューを飾ると、37試合で6本塁打を放った。
2010年は1A-、1Aの2球団合計で103試合打率.211、8本塁打、36打点を記録した。
2011年7月29日に交換トレードでヒューストン・アストロズへ移籍。1Aで113試合打率.287、12本塁打、53打点を記録した。
2012年は1A+でプレーし、119試合打率.302、23本塁打、97打点を記録。
2013年は2Aでプレーし、112試合打率.252、25本塁打、64打点を記録。またオフには40人枠入りを果たした。
2014年は3Aに初昇格し、120試合打率.296、16本塁打、81打点と活躍。7月1日にメジャー昇格。しかしメジャーでは6試合打率.000、0本塁打、0打点と結果を残せなかった。
2015年7月30日に交換トレードでミルウォーキー・ブルワーズへ移籍。2球団合計52試合打率.238、8本塁打、26打点を記録。
2016年はメジャーで77試合に出場し、打率.256、11本塁打、32打点を記録。
2017年はライトのレギュラーに定着。151試合打率.278、30本塁打、85打点、OPS.875とキャリア最高の成績を収めた。
2018年はブルワーズが外野手の大型補強を敢行。その結果レギュラーを奪われ、85試合打率.265、5本塁打、20打点と前年を大きく下回る成績に終わり、11月21日にトレードでシアトル・マリナーズへ移籍した。
2019年は日本で行われた開幕戦でチーム第1号となる満塁ホームランを記録。シーズンでは121試合打率.253、21本塁打、69打点、OPS.770を記録。しかし12月2日にノーテンダーFAとなり、退団。2020年2月にクリーブランド・インディアンスと1年契約を結んだ。
しかし24試合打率.157、2本塁打、12打点と不調に苦しみ、8月31日にDFAとなり、9月3日にマイナー契約へ切り替え。10月30日に球団が契約延長オプションを破棄したことでFAとなっていた。
成績で読み解く
上記はドミンゴ・サンタナのMLB、3Aでのシーズン成績です。
注目されるのはやはり長打力。2017年は30本塁打、2019年は21本塁打、メジャー通算77本塁打を記録するなど長打力という部分においてはメジャーでも十分な結果を残せるだけの実力があると言えます。
また三振は多いタイプですが、四球が選べている選手であり、選球眼を測る指標であるIsoD(出塁率-打率)はまずまずの結果が残っている選手です。
長打力不足のスワローズにとって、サンタナは補強ポイントに合致している印象です。
MLBレベルのファストボール、スライダーには強いが縦変化に苦戦
上記はドミンゴ・サンタナの球種別打率と打撃傾向です。
まず注目したいのはMLBレベルのストレートに対して強さがある事です。2017年にメジャーで30本塁打を放った際には、19本はストレートを打っての記録です。
平均球速がMLBよりは落ちるNPBにおいてはこの部分の強さが更に特徴的になるのではないかと思われます。
またスライダーに対しても通算19本塁打を放ち、2019年は7本塁打はスライダーを打ったデータが残っています。ただ縦変化のチェンジアップ、スプリットやカーブに対しては脆さがある印象で、NPBでは課題になるかもしれません。
打席でのアプローチですがWhiff%が通算32.4%と空振りが多く、ZoneContact%も通算76.1%とストライクゾーンのボールへのコンタクトという部分も空振りが多い影響かあまり高い数字とは言えません。
しかしChase%は通算24.6%とボール球にあまり手を出すタイプではなく、四球も選べる傾向です。
ただ気がかりなのは今シーズンの打球速度、打球角度、HardHit%、Barrel%、GB/FBが昨年から大幅に悪化している事です。明確な原因とは限りませんが、2019年シーズンに守備中に右肘を痛め、離脱したという時期があります。
実際この怪我以降はマリナーズでの成績は降下し、オフにはノーテンダーFAになっていますし、肘のコンディション面は注視したいところです。
大きなマイナスが目立つ外野守備 ライトならばなんとかなる程度か
上記はドミンゴ・サンタナのMLBでの守備指標です。
外野守備に関しては指標のほとんどがマイナスが並んでおり、厳しい部分を感じさせます。
2019年はライト、レフト合わせて865.2イニング守ったのですが、UZRが-16.1を記録し、失策12というすさまじい数字です。特にこの年のレフトの守備では500イニングで9失策するという深刻な守備難を露呈してしまいました。
一方でライトの守備はマイナスも多いのですが、2020年シーズンはARM、ErrR、UZRがプラスの数字になっています。ただ1200イニング以上守った2017年は5失策もしていることを考えると、守備に関しては粗さが感じられる場面が多そうです。
映像で見る
2020年の打撃集
逆方向へのホームラン集
映像を見ても打球速度を感じさせますし、パワーに関してはこれ以上ない強烈なものを感じさせます。また逆方向への打球も外野の動きや見送る選手の視線の送り方などを見ても想像以上に打球が伸びるような印象を受けます。
MLBの球場は広さが様々なケースが多い中で軽々と逆方向や右中間にホームランを打てるという部分を考えると、神宮球場のような広さであれば、ホームラン数は格段に増える可能性があります。
一方で守備面のマイナスは大きい選手であり、打てなくなった時の貢献は難しくなる可能性もあり、サンタナが日本でどのような活躍を見せるのか注目したいところです。