第4話 運気上昇のループを描ける関係とは?
運気上昇のループを描ける関係とは?
いい人同士の組は互いに感謝し助け合う互恵の関係なので、たとえば、一方
が1のものを与えたら、相手は「ありがとう」と感謝して、その1.5倍を返そうとしま
す。仕事の場でも足し算・掛け算のような相乗効果を生みます。そこには、より
よい人材が集まるので組織は豊かで強靱になり、上昇のループを描きます。こ
うして、利他性の高い人ほど社会的に豊かな人生を選べる可能性は高くなりま
す。
一方、悪い人同士の組は、自分のことばかりを考え、互いに相手を利用しよ
う、騙してやろうとするので、引き算の関係となり、結局はうまくいきません。自
分の利益になるかぎりは協力関係を築くものの、利益に反すると思えばあっさ
り裏切るからです。ビジネスの場であれプライベートであれ、継続的に協力し合
って富や幸を生み出すということができません。
結局、悪い人はどこに行っても、いい人々の輪に加われないので、損の坂道を
下り続けることになるのです。そのとき利己主義者は「自分はうまく立ち回って
いるつもりなのに、運がない。不幸だ」と感じることになるのです。
筆者と共同研究者が行った無作為抽出400人を対象とした調査でも、「利己的
な傾向を持つ人々のほうが、そうでない人々よりも、主観的な幸福感が低い」と
いうデータが得られています。
利己主義者が必ず損をする第3の原理は、(3)の集団淘汰原理です。これは、
利己主義者が支配する社会は社会ごと自滅し淘汰されてしまうという話です。
アメリカの西部開拓史でも、ならず者が甘い汁を吸い続けた町は最後は吸うべ
き汁も底をつき、遂には町自体がゴーストタウンと化しています。利己主義者が
せっかく天下を取っても、その社会自体が破滅してしまうので、結局は利益を
失い、損をするのです。
企業も同じです。成果主義が効果を上げても、全社的に利己的体質が過剰に
なれば、やがては会社自体が崩壊に向かうでしょう。
第3話 悪者を見破る能力を進化させてきた人間
悪者を見破る能力を進化させてきた人間
進化心理学の考え方によると、イヌは嗅覚を高度に発達させることで生き残っ
てきました。コウモリは超音波を聴き分ける能力を身につけたものが淘汰を免
れました。同様に、社会的な存在である人間の場合は「悪者を見破る能力」
を、進化の過程で異常に発達させてきたのです。
さまざまな人間が蠢く社会のなかで、「見破り能力」を発達させられなかった人
は誰かに騙され、生きのびることができませんでした。今日生きている私たち
はみな、騙されない能力を発達させることに成功した人々の子孫であり、「悪
者」を瞬時に検知する遺伝子を強力に受け継いでいるのです。このことは以下
の実験からも証明できます。
まず「ウェイソンの実験」と「コスミデスの実験」です。図2の2問のクイズは、両
方とも論理構造は全く同じで難易度にも差はありません。しかし、正答率は「数
字・アルファベットの問題」より「未成年者の飲酒に関する問題」のほうが格段
に高いのです。
これは、人は純粋に論理学的な問題より、社会ルールの違反者を発見すると
いう人間関係にまつわる問題に対してのほうが、アンテナがより高感度に働くと
いうことを表しています。心理学者コスミデスは、このような心理的メカニズムを
「裏切り者検知モジュール(装置)」と呼び、人間は悪者をすばやく発見する装
置を備えた生き物だと指摘しています。
ですから、利己主義者が本性を隠して表面を取り繕っていることを、私たちは
ほんのささいな言動からでも敏感に察知します。たとえば、いい人だと思ってい
た人物が店員にとった横柄な態度を垣間見たり、目が笑っていないことを発見
した瞬間に感じる違和感などがそれです。
次に写真を用いた心理テストです。まず、たくさんの人々の中から心理テストを
通して「極端に利己的な人間」と「非常に正直な人間」を選別し、彼らの顔写真を撮ります。そして、それを全く予備知識のない人たちに見せます。すると、多くの人が彼らの外見に滲み出る人間性を敏感に嗅ぎ取り、利己主義者と正直者を見分けることができたという実験結果があります。つまり人は初対面の相手ですら「自分勝手なヤツ」を見抜けるのです。
(1)や(2)の原理の結果、利己主義者には真の友人やビジネスパートナーができません。一方、配慮範囲が広く利他性の高い「いい人」には、いい人も悪い人も寄ってきます。相手の利益を考え、裏切ることもない人と一緒にいると得なので、誰もがその人と一緒にいたくなるからです。
この場合、いい人は、心理学上のマゾでもないかぎり、必然的にいい人のほうをパートナーとして選びます。はじかれた悪い人は、結果的に、残った悪い人同士でタッグを組むしかありません。1人よりはマシだという心理が働くためです。
第2話 姑息(こそく)な損得勘定が必ずバレる理由
姑息な損得勘定が必ずバレる理由
自分の損得ばかりを考えて行動する利己主義者は、正直者を出し抜いて一時
的には得をします。が、長い目で見れば必ず損をする運命にあります。
それは、人間の社会には次の3つの原理が存在しているからです。
(1)互恵不能原理
(2)暴露原理
(3)集団淘汰原理
まず、(1)の互恵不能原理から。自分の損得ばかりに焦点が合っている利己主義者は、「お互いさま」で成り立っている人間社会で、最終的には「嫌なヤツ」
として人々から村八分にされます。そのため、よいパートナーに恵まれて力が倍加したり、窮地を支援者の助けで脱したりという幸運にも恵まれづらく、「互
恵」が「不能」になるので、結局は正直者より損をします。これは構造がわかり
やすいため、あからさまにわがままな行動をとる人は、実際のところ少数派でしょう。
心理学的に、より注目すべきは(2)の暴露原理です。暴露原理とは、人間には利己主義者を見分ける能力がきわめて強力に備わっているということです。
利己主義者は((1)の互恵不能原理によって)周囲から排除されるのを防ぐた
め、表面を取り繕う行動に出ます。「この人の力を利用できれば得だ」と計算し
た相手の前では、愛想よく振る舞い、自分はいい人だとアピールします。逆に自分にとって利益がないと判断した相手には冷たい態度をとります。損得計算に基づく姑息な「態度」の使い分け。見せかけの利他性です。
ところが、いくら表面をごまかしても、利己主義者であることはすぐバレてしまい
ます
