セロニアス・モンクが大好きなので、テナーのチャーリー・ラウズさんは、パートナーに恵まれなかったモンクの晩年を支えた人、偉い。という認識しかありませんでした。

しかしながら、YouTubeでなんとなくCharlie Rouseと検索したら、"Two Is One"という奇数拍子のヤバいファンクが飛び出し、びっくりです。これラウズさんの自作曲なんですね。

1974年ストラタ・イースト・レーベル、George Davis(g)、Paul Metzke(g)、Calo Scott(cello)、Martin Rivera(b)、Stanley Clarke(b)、David Lee(dr)、Azzedin Weston(conga)、Airto Moreira(perc)、Charles Rouse(sax)。
1曲目、"Bitchin' "と3曲目"In A Funky Way"はリラックスしたファンキーな演奏。
タイトルはなんかマイルスへのトリビュートなのだろうか。
2曲目、ヘヴィなファンク"Hopscotch"(フリーダム・ジャズダンスみたいな曲)もかっこいい。
5曲目、最後の"In His Presence Searching"。タイトルからしてフリーダムな香りがぷんぷんします(コルトレーンへのトリビュートの意味もあるのでしょうか?)。
いきなりチェンバロみたいなギター、地を這うチェロ。
アラブ音楽っぽいというか、インド音楽っぽいというか。しかしメロディアスで、どこかもの悲しくも優しい雰囲気。
タイトルから当然予想される事態として、鈴の音が鳴り始めます...レコーディング時、スタジオではお香を焚いていたのだろうか...と、エリック・ドルフィ"Other Aspects"みたいな訳のわからん世界にどっぷり浸っていると突然、鈴の音とともに、60年代サイケデリックロックをファンキーにしたような世界に突入してしまいます。
はっきりいって、わけがわからないが、かっこいい。
最後は鈴の音です。
マイルスの"Get Up With It"に近い真っ黒さです。

わたしは1995年にボンバ・レコードから出た日本盤CDゲッツしましたが、輸入盤にもすごいプレミアがついてるみたい。


Two Is One/Charlie Rouse
¥1,143
Amazon.co.jp
ザッパ・バンド完成期。個人的にはこのあたりがザッパ初体験におすすめです...

●Overnite Sensation(1973)
腕利き揃いを集めたバンドによるコンパクトな曲を集めたアルバム。
魔女との恋の冒険を描いたポップチューン"Camarillo Brillo"、
粘っこいファンク"I'm the slime"、"DIrty Love"、
突拍子も無いロック"Fifty-fifty"、"Zombie Woof"、
"Dinah-Moe Hum"と最後の"Montana"はなぜかカントリー風だが、前者はポップな下ネタ曲、後者は壮大な演奏で「モンタナ州には糸ようじの畑がある」と断言。

この時期からのザッパ、ナポレオン・マーフィー・ブロック、ジョージ・デューク、ファウラー兄弟、チェスター・トンプソン、ルース・アンダーウッドらを核とするバンドを最強の布陣と呼ぶファンも多いです。

●Apostrophe(') (1974)
前作と二枚で一組的なアルバム。
A面はシングルヒットした「黄色い雪を食べちゃダメ」に始まる「聖アルフォンゾのパンケーキの朝食」をフィーチャー。
初期マザーズで確立されためまぐるしく変わるコラージュ的な展開のお笑いソングで「エスキモーになった夢を見た…」という導入部から、いつしか物語はスカンディナビアのとある聖堂(?)における意味不明な乱痴気騒ぎへ。最後はラテン語の歌詞でラテンをやってます。
以下、新興宗教を皮肉ったブルース"Cosmic Debris"、よくわからん小曲"Excentrifugal Forz"、ジャック・ブルース、ジム・ゴードンとのジャム"Apostrophe"、ジョージ・デュークとの共作による(皮肉な)泣きのR&B"Uncle Remus"、文字通り「臭い足」についてのブルース"Stink-Foot"と、代表曲たくさんの楽しいアルバム。

なおDVDでドゥイージル、ルース・アンダーウッドらがザッパ音楽について語る"Classic Album: Apostrophe / Overnite Sensation"というドキュメンタリーDVDも出てます。ドゥイージル・ザッパによるザッパのオーケストレーションとミックスについての解説、ルースさんが『聖アルフォンゾ』のマリンバのイントロを実演するところが興味深かった。

クラシック・アルバムズ:アポストロフィー(’)+オーヴァーナイト・センセーション [DVD]/フランク・ザッパ
¥4,935
Amazon.co.jp
Over-Nite Sensation/Frank Zappa
¥1,869
Amazon.co.jp
Apostrophe(’)/Frank Zappa
¥1,869
Amazon.co.jp
グランド・ワズー期。
フロ&エディという強力なフロントと共に快進撃の1971年、12月にモントルーでのライヴ中、何かの理由で火災が発生、幸いにも人的事故はなかったそうですが、ザッパバンドは機材を焼失。対岸から見ていたディープ・パープルは事件をかの"Smoke on the Water"という曲に。直後のロンドンでのライヴ中、ザッパ先生はいかれた観客の方に突き飛ばされ、オーケストラ・ピットのコンクリートの床へ4mの強制イーグル・ダイヴを余儀なくされます。重傷から生還したものの、その後遺症は凄まじく、両足の長さが違ってしまい(後に自分をZombie Woofというキャラとして曲の主人公にした)、声帯が押しつぶされ声のピッチが3度下がり(歌いやすくなった、とも語っている)という怖ろしいことに。
メンバーは生活のためそれぞれの活動をせざるを得ず、バンドは解散、しかしこの療養期間中ザッパは楽譜を書きため、ビッグバンドによる活動を企画、というのがこの時期。

●Waka/Jawaka(1972)
Hot Ratsの続編的なビッグバンド作品。
1曲目の大作"Big Swifty"冒頭の突拍子もないリフを聞いた瞬間爆笑した想い出があります。
ジャンプ・ブルースっぽくもあるポップな"Your Mouth"、ブルース風のヴァース、カントリーなコーラス、そして現代音楽な音列で「どんなシュールな出来事に巻き込まれたとしても、楽しまなきゃ。だって一度しか見られないかもしれないんだから」と主張する奇天烈な"It Just Might Be a One-Shot Deal"の小曲2曲を経て、再びインストのタイトル曲で大団円。
不幸な事故の連続の後とは思えない、あっけらかんとした雰囲気の傑作。
70年代ザッパを支えた一人で後にマイルス・デイヴィスのバンド入り、ソロ・アーティストとしても成功、つーかそもそも説明する必要全然ないジャズ・フュージョン界の名士ジョージ・デューク、トランペットのサル・マルケス、ベースのErroneous、ドラムにエインズレー・ダンバーetc. 初期マザーズの魔神博士ドン・プレストンも参加。
Erroneousさんは本名はAlexander Dmochowskiというらしい.バイオグラフィについて全然知らないのですが、ピーター・グリーンとかそういう人とやってた人みたい。ジョン・メイオールとやってるライヴ映像がYouTubeにあった。"JOHN MAYALL California 1970 Live!"ってやつ。

●The Grand Wazoo(1972)
Waka/Jawakaと対になるようなアルバムで、メンバーがかぶる(大幅増量中)。
これは前作以上に濃密なジャズ的インストアルバム。

カル・シェンケルによるジャケではジャズ/R&Bの帝王たるクリータス・オリータス大王がブラスとギターで陳腐なストリング・オーケストラを撃破している。裏ジャケではその光景を幻視する奇人博士「アンクル・ミート」が秘密研究所でほほえんでいる...不気味に。

この奇人博士=音楽家のイメージ、自伝を読むと、少年時代に初めて見たエドガー・ヴァレーズのポートレイトにルーツがあることがわかる。意外に素直なザッパ先生。

マイルスの"jack johnson"のようなアーシーなシャッフルを基調にしたタイトル曲と"For Calvin"では、怪人博士Don Prestonもフリーキーなモーグ・ソロを聞かせ、オリジナル・マザーズの懐かしい雰囲気も立ちのぼる。

不思議な曲想のボーカル曲For Calvinはカル・シェンケルの車に勝手に入り込んだラリった二人組が黙ったまま車から降りず、しかたないので放置してたら翌朝、車の中でサンドウィッチを作って食べて去って行った、という実話に基づいているそうです...

クリータス大王の勇壮でバカっぽい行進曲を経て、ブルースのギターリフをテーマにしたジャズ・ファンクEat that Questionはジョージ・デュークのエレピ、ベースのErroneous、エインズレー・ダンバーのドラムの熱いジャムをフィーチャー。
最後のBlessed Reliefはタイトル通り安らぎを感じさせる至福のジャズワルツ。

Waka/Jawaka/Zappa Records
¥1,869
Amazon.co.jp
Grand Wazoo/Zappa Records
¥1,823
Amazon.co.jp
フロ&エディ期
●Chunga's Revenge
オリジナル・マザーズを解体したザッパ。いろいろあって、"happy together"のヒットで知られるタートルズのポップ・デブ・マエストロ二人組、フロ&エディをメンバーとして作られた「フロ&エディ期」(そのまんまですが)の最初のアルバム。
ドラムはエインズレー・ダンバー。
あくびをしてるザッパの真っ赤なジャケがなんだかのんびりした本作もまたいい感じ。

この時期はフロ&エディのキラキラと輝く変態性もあって、明るくハッピーでロックっぽい。ロックバンドのツアー内幕話や下ネタを題材にしたポップなナンバーが中心。

オープナーはギター・ジャム・ナンバー「トランシルヴァニア・ブギ」でゴキゲンに始まりまして、2曲目のRoad Ladies、キング・クリムゾンにもそんなサイケ・ポップ風の皮肉な曲があったけど、こちらはブルースで、なぜか何でも弾けるイアン・アンダーウッド先生がギターを弾いてる(!)。海外駐屯中の軍人さんの乱痴気騒ぎ、ミュージック・ユニオンを茶化した曲、頭が悪いヘヴィメタなどをネタにしたポップなロックチューンもありつつ、植草甚一のお気に入りだったらしい「20本の短い葉巻」はモーダルなジャズ風の小曲、なんかプログレッシブ・ロックっぽいインストのタイトル曲は後にウォン・カーウェイ『ブエノスアイレス』で突然流れてきてこそばゆかったし、ザッパの打楽器演奏によるよくわからんThe Clap、泣きのR&B"Sharleena"などなど...

こう見てくると、最初にロックっぽいと断定口調で書いた割に、全然ロックではないような気もしてきたが。まあとっつきやすいアルバム。

●Filmore East June 1971
フロ&エディ期のライヴ。初期マザーズのライヴのどろどろとした部分は払拭され、随所にロックバンドではありえない奇妙な曲展開を交えながらも、基本的にはChunga's revenge同様のおバカなロックっぽいお祭り騒ぎ。"Burnt Weeny Sandwich"収録の大曲「俺の住んでた小さな家」のさわりから始まり、当時の大統領選への言及も言外にありつつも、レッド・ツェッペリンの「サメ事件」などをネタにしたおゲレツなロック漫談が展開。
いや、すごく楽しくて大好きなアルバムという以外に、別に書くことがないのだった。

●200 Motels(1971)
ついに、わたしのザッパ・ディスコグラフィにおける最初の未聴アルバムがきました。
なんかCD持ってたような気もするけど...
リンゴ・スターがザッパを演じる映画のシーンはちらっと見たことある。
フロ&エディに、ジョージ・デューク、ルース姐さんも参加、
Magic FingersとかStrictly Genteelの初演もここですね...聴こう。

●Just Another Band from L.A.(1972)
これもフロ&エディ期のライヴ。歩く山の「ビリー」!その妻は肩に生えてる「木のエセル」! 彼らの訳わからん物語が語られるロック・オペラ"Billy the Mountain"をフィーチャー。対訳かせめて原詩がないと訳わからんと思われる。過去曲の再演もあるけど、そっちは個人的にはあんまりピンとこず、あんまり聴いてないアルバム...
フィルモアは好きなんだけど...オリジナル・マザーズが好きすぎるのだろうか?

フロ&エディ期、最高。歌めちゃくちゃうまいし、バカだし! それは間違いない! が、なぜか内的なレコメンド感が盛り上がらないまま、この記事は終わるのだった。なぜか!


Chunga’s Revenge/Zappa Records
¥776
Amazon.co.jp
Fillmore East - June 1971/Zappa Records
¥2,282
Amazon.co.jp
200 Motels: Original MGM Motion Picture Soundtr.../Rykodisc
¥3,011
Amazon.co.jp
Just Another Band from L.a./Zappa Records
¥1,869
Amazon.co.jp
オリジナル・マザーズの終焉。

●Hot Rats(1969)
ザッパのソロ名義。牛心隊長の咆吼がすさまじい1コードのブルースロック"Willie the Pimp"以外はインスト、全6曲。
初期作品では多分一番聞きやすい...理由はジャケが不気味じゃない(ピンク色に着色された世界で墓から起き上がらんとするゴスなメイクの女性が不気味じゃない、と仮定するなら)。奇声や訳のわからないフリークトーンがない。

人気曲"Peaches en Regalia"に代表される、管・弦・鍵盤がカラフルに絡み合う室内楽ジャズファンクというような音楽。
初期マザーズの準メンバー?「どんな楽譜でも読んで演奏できる」がマザーズ加入時の売り文句だったというイアン・アンダーウッドが主役級の大活躍。
ギターがザッパ、ローウェル・ジョージ、ベースでシュギー・オーティス、マックス・ベネット、ドラムにロン・セリコ、ジョン・ゲリン、Apostropheなどで、もメンバーのポール・ハンフリー。ヴァイオリンでシュガーケイン・ハリスと後にザッパバンドに入るジャン・リュック・ポンティ。

ザッパはジャズのII-V進行が大嫌いだったそうで、ソロのためのヴァンプとして出てくることはあっても、曲の骨格には「いかにもジャズっぽい」コード進行はあまり出てこない。また自伝では12音技法やセリエリスムの「ルール」なども無意味な規範に過ぎないと語っており、そういう意味ではアカデミックな意味での「現代音楽」としてのお墨付きが与えられるような音楽でもない。かといってロックとも言いがたいし、つまるところザッパという人をカテゴライズするなら、「完璧な余所者 Perfect Stranger」というしかないような気がする。

●Burnt Weeny Sandwich(1970)
オリジナル・マザーズ解体後の「お蔵だし」アルバムその1。
バンド解散の理由はコンサートの楽屋で、プロモーターに10ドルの前借りを頼んで無視されているデューク・エリントンを見て、あれほどの音楽家にしてもバンド稼業の行く末はこれか!?と絶望したから、らしい...

"WPLJ"と"Valarie"の2曲のドゥワップ以外は室内楽的なインスト作品。
それらはHot Ratsの音楽性に近いのだけど、オリジナル・マザーズの怪人達の演奏だとどこかユーモラスでスットコドッコイな感じ、どんなに先鋭的で高度なことをやっても、ローカルなR&Bバンド時代の泥臭さ骨太さが抜けない。そこが心地いい。

クラシカルなピアノに導かれて始まる「俺の住んでた小さな家」は、一転して弾けるようなカラフルなパートが次々と繰り出されていく大作で、鉄壁のグルーヴ、シュガーケイン・ハリスのヴァイオリン・ソロも熱すぎる。これはやばい。初期マザーズの金字塔にちがいありません!
Uncle MeatやHot Ratsが好きになった人にはおすすめの一枚。

●"Weasels Ripped My Flesh"(1970)
ネオン・パークのジャケが強烈な「いたち野郎」。オリジナル・マザーズお蔵だし第2弾ですが、ザッパらしい、とも言えるし、異色作、とも言える。
初期マザーズのライヴにおけるフリーキーでグロテスクな側面を強烈に刻印した印象。
特にアナログA面はやりたい放題。
私も大好きなアルバムだし結構ファンの人気も高いアルバムですが、

グロテスクな奇声と暴力的な奇数拍子のオスティナートなどで構成された"Didja Get Any Onya"(以下、LPで未収録パートを含み倍近い長さになっていた初期CD版に基づく。LPバージョン未聴)では、後にLittle Feetを結成するローウェル・ジョージ(ドラッグ嫌いのザッパはドラッグを使っていたローウェル・ジョージの才能を認め、むしろ自分のバンドで活動するよう勧めたらしい)がナチス時代のドイツの街頭について不気味に語る。
この曲の冒頭部分を聞いた瞬間、訳のわからないゼンエイ音楽...と感じる人もいるかもしれないし、爆笑する人もいると思う。私は爆笑しました。

つまるところ音楽ってのは鳴らされたままのもの、聞こえるままのものであり、背後に「理解すべき難解なもの」はない。むしろ「難解さ」は聞いてる人の頭の中にある。
(耳慣れないものを聞き取るためには多少の知識や経験が助けになるかもしれないけど)
鳴っている以下のもの・以上のものを頭の中で聞いてしまうことが、音楽を難解な訳のわからないものにしてしまう、などと思ったりもしますのです。

初CD版の最後に出てくる7拍子のパートはCaptain Beefheartの"Trout Mask Replica"にも"The Blimp"として収録された曲。

2曲目はシュガーケイン・ハリスのヴァイオリンをフィーチャーしたブルース、3曲目はドビュッシーをネタにたぶん寸劇をやってるところ。アコギをフィーチャーした可愛らしいワルツがポリリズムの中に飲み込まれていく4曲目。どんよりしたブルースロック風のジャムの5曲目。

対してB面は後年も演奏される有名曲も多い。不安な美しさを湛えたEric Dolphy"Out to Lunch"へのオマージュの6曲目。
7曲目もキュートな室内楽とテープコラージュによる奇妙なノイズ。最後はかっこいいR&Bなのだが訳のわからない展開を見せる"My Guitar Wants to Kill Your Mama"、そして宗教への皮肉をこめた代表曲"Oh No"(Lumpy Gravyにも使われていた曲)から美しいインスト"The Orange County Lumber Truckを経て、クラスターによるノイズのタイトル曲で終わる。最後のザッパの"Goodnight,boys and girls"という挨拶がいい。


Hot Rats/Zappa Records
¥1,869
Amazon.co.jp
Burnt Weeny Sandwich/Zappa
¥1,785
Amazon.co.jp
いたち野郎(紙ジャケット仕様)/ビデオアーツ・ミュージック
¥2,625
Amazon.co.jp
●Uncle Meat(1969)
中学生のころ、このジャケをレコード屋で初めて見たときは、一生聞くことはない変態レコード、と思っていましたが...あにはからんや、実は収められた音楽は美しいのです。初期マザーズの泥臭い変態性を脱して洗練に向かっている印象。
ドラムにアート・トリップが加わり、イアン・アンダーウッドの奥さんで、70年代ザッパバンドの要となるパーカッショニスト、ルース姐さんも初登場。
ザッパといえば、なマリンバが大炸裂。

奇妙で美しい室内楽的インストが中心。アートワークとの関連性は、どう考えても...わからん。従って、単に音楽だけを無心に聞けばいいのだと思う。
ノイズと不協和音が前面に出た「いたち野郎」のインストより聞きやすいと思う。
「電気仕掛けのジェマイマおばさん」「ドッグ・ブレス」「クルージング・フォー・バーガーズ」などなんだか楽しいボーカル・チューンも数曲ある。後2者の歌詞は、50~60年代のカリフォルニアのチカーノのティーンエイジャーの生活を題材にしてるみたい。

CD化に伴うボーナストラックは別にして、最後は6/8のジャズファンク「キング・コング」。
1968年BBC出演時の映像が残っていてYouTubeで見ることができるが、なんというか、おっさんパワー全開の凄い演奏。マイルスの"In A Silent Way"と並んで、英国プログレッシブ・ロックへの強い影響が推測できる感じ。
オリジナル・マザーズは後年の超絶技巧はなかったかもしれないが、演奏は安定しているし、迫力がすごい。ザッパ御大に「バンドのインディアン」ジミー・カール・ブラックとアート・トリップのツインドラムにロイ・エストラーダのぶっといベースのリフ、グラサンのモーターウッドのデタラメだが存在感が凄いバリトンにバンク・ガードナー、イアン・アンダーウッドの三管。
途中で演奏が止まるとバンドがエグい奇声を上げる中、オルガンの死神博士ドン・プレストンがニヤニヤしながらマイクを口の中に入れ、バリウムを服用。
怪人博士のサイキック・パワーに感染したロイの甲高い高笑いの中、
絶叫して、死にます(笑)。
するとまたKing Kongが始まり、死亡したままモーターヘッドに二人羽織状態で無理矢理オルガンを弾かされるドン・プレストン。サイケデリック・ロックへの皮肉とかいう以前に、すごくTVの映像として、アウトな世界。

自伝によると、当時は泥酔した海兵隊員にステージ上で人形を引き裂かせるとか、すさまじい演出のライヴをやってたらしい。

アルバム・タイトルの由来。
ザッパは当時マザーズの参加メンバーに変なステージネームを付けていて、サンディ・ハーヴィッツ(後にシンガー・ソングライター、エズラ・モホークとしてシンディ・ローパーなどへの曲提供でも有名に)に付けた名前が"Uncle Meat"。
ザッパのプロデュースによるサンディ・ハーヴィッツのアルバム"Sandy's Album Is Here At Last"は、ザッパとの意見の対立で中途半端な出来になってしまい、ジャズっぽいアレンジでかっこいい曲もあるが、可憐ではあるが、ヒッピーっぽいダラダラしたピアノ弾き語り(アシッド・フォークとかいうやつ)も多かった。
サンディさんはライナーで、当時のザッパとの対立の理由を、自分がまだまだ若くてあまり音楽製作のことをわかってなかったせい、と述懐してた。


Uncle Meat/Zappa Records
¥2,053
Amazon.co.jp
SANDY’S ALBUM IS HERE AT LAST ! + BONUS TRACKS/Collector’s Choice
¥1,264
Amazon.co.jp
●Lumpy Gravy(1968)
ザッパの初ソロ名義の作品。
事情でポシャッたオーケストラ作品の音源を元にした全1曲のアルバム。
以後、ライヴ音源や既存の録音をエディットして作品を構成する手法が確立、
しまいにはライヴアルバムとスタジオアルバムの区別もなくなってしまう。

「いたち野郎」(1970)にボーカル入りで収録されることになる"Oh No"の様々なバージョンや、ジャズ、サーフロックなど混沌とした音楽の断片とともにザッパの知人の不可解な会話がコラージュされている。
セリフは「ドラムやピアノの中に住む人々」「ポニーと豚のナショナリズム」などなどを巡る、ユーモラスだけど時に不気味なもの。(B面の、ポニー!と一声叫ぶところが妙に笑える)
不協和音だらけの聞きにくい前衛作品、ということは全くないけれど、ひたすらシュールで、何とも形容しがたい不思議な音楽です。ぼんやりとかけっぱなしにするのも良いかもしれません。

マイルス・デイヴィスは『On the Corner』について、全ては終わらない音楽のOn/Offなのだということをオレはシュトックハウゼンの作品から学んだのだ、などと疑似科学的な言説を披露してましたが、ザッパも自伝でマイルスの言葉とまったく同じ、現代音楽からの影響と思われる自身の音楽概念を語ってます。
セリフの中にもそんな"big note"についての話が出てきますが、この作品におけるザッパのコンセプトは、オブジェクトが時間軸上に置かれ構成されたものが音楽である、そしてそれらオブジェクトは狭義の音楽に限らず会話でもノイズでも何でもいい、というものだったのではないでしょうか。

作品中のセリフやキーワードは"One Size Fits All"収録曲だとか遺作"Civilization: Phase III"などなど、後の作品でも再利用され、一種の連想に基づく大きな物語となっていく。「ピグミー・ポニー」や「翼のある豚」(ロジャー・ウォーターズはこのアルバムを聞いていたのだろうか?)「ピアノの中に住む人」などの奇妙なキャラクター群による一種のスターシステムもザッパの作品を聞く楽しみの一つ。

●Cruising with Ruben & the Jets(1968)
カリフォルニアのチカーノの若者たちによる架空のR&Bバンドの演奏を模した、フェイク作品。後にこのアルバムに共感したルーベン氏が、ザッパ公認のリアル版ルーベン&ザ・ジェッツを結成した。

アホな歌詞、しょぼい演奏、しょぼい録音。しかしながら現実の50~60年代前半のR&Bバンドにはありえないコード進行を用い「新古典主義時代のストラヴィンスキーの手法で」作られている。

これを「ロックの黄金時代」として知られる1968年に製作する批評性はとんでもないが、もはやそのヒネりが伝わらないと判断したのか、後にリズム隊をさしかえて、普通に「ポップなオールディーズ風」のレコードになってしまった。"Greasy Trucks"というCDで差し替え前のバージョンが聞ける。タイトなさしかえ後バージョンも、いろいろヒドいオリジナルも、どっちも好きだけど。

ところで、「ラヴソングは陳腐だ」ということを、わざわざ作品として折々に発表しつづけるという行為。それは、逆説的な愛着の現れと解釈することもできる。
またザッパの他の曲を聞くに、B級モンスター映画の安っぽさについて「安っぽすぎるぜ、だがそれが好きなんだ」と歌う、"Cheepnis"などを聞くと...ほんとにラヴソング嫌いなだけなんですか、ザッパ先生。

同じ1968年、このアルバムの発売の5ヶ月前にはこれまた「(架空の)古き良きアメリカ音楽」、リヴォン・ヘルム以外カナダ人のザ・バンドによる1stアルバム『ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク』が発表されている。

ランピー・グレイヴィ(紙ジャケット仕様)/フランク・ザッパ
¥2,625
Amazon.co.jp
Cruising With Ruben & the Jets/Frank Zappa
¥1,823
Amazon.co.jp
●Absolutely Free(1967)
「みなさん、合衆国大統領です!彼はずっと病んでました!」というナレーションからはじまる2ndは、曲間の切れ目が無く構成され、また個々の曲のアレンジ、構造も1stより一層複雑に。少年期に大好きだったという「春の祭典」の引用なども。
メンバーも増加、木管にバンク・ガードナー、ジム・シャーウッド、キーボードに70年代のアルバムにも参加してた怪人博士ドン・プレストン、ドラムにビリー・ムンディが加わりツインドラムに。
1stの曲のビートはシカゴ・ブルース的だったりしたけど、このアルバムではもっと多彩になってて、R&Bというより「ロック」な感じになった、と思います。ザッパ自伝ではMGMに理不尽なスケジュールを強要され、一つとして満足いく仕上がりにならなかった、と述懐されてますが、1stよりさらに前進した作品だと思う。ザッパ初体験の人にどうしてもオリジナル・マザーズをお勧めしたいなら、私ならこの2ndか3rdだけどなあ...

R&B「ルイ・ルイ」のリフを援用してアメリカの俗悪さを嘲笑するロックチューン"Plastic People"、耽美な室内楽風サウンドに下品な歌詞を載せて8ビートと融合させた"Duke of Prunes"、フルートとベースのユニゾン・リフがクールだけどなんか笑える"Call Any Vegetable"、冒頭のたたみかけるような展開が強烈。
B面はややA面より印象が薄い気もしますが... 最後の"Brown Shoes"はコラージュ的な場面転換の積み重ねで構成された大曲で、このような楽曲構造も後の「Don't eat the yellow snow」などなど、ザッパ独特の手法として発展されていく。

●We're only in it for the money(1968)
最初期の作品の中ではイチオシだと思います。

木管のモーターヘッド・シャーウッド、60年代ザッパの音楽を支えたマルチ・プレイヤーのイアン・アンダーウッドが参加。
ザッパの盟友としてこれ以降のアルバムのアートワークの多くを手がけるカル・シェンケルも初登場、サージェント・ペパーズをパロディにしたジャケを担当。
前作のコラージュ的な構成を推し進め、異形でありながらもキャッチーな小曲のコラージュとしアルバム全体が構成されている。
60年代アメリカ社会の若者への抑圧と、それに対抗する筈の「カウンター・カルチャー」(ラリったヒッピー)の幼稚さを一括して嘲笑するコンセプトアルバム。

奇数拍子の多用が印象的。痛烈な歌詞のドゥワップに7拍子と複調的なパートをぶちこみ「あんたたちは子供たちに無知しか与えてない!」とアジる"Whats the ugliest part of your body?"、5/8拍子と7/8拍子で疾走する「ヘイ・ジョー」のパロディ"Flower Punk"、皮肉とポジティブなメッセージが二重にこめられた(アンチ)サイケデリック・ポップ"Absolutely Free"、ザッパの子供時代に材をとった"let's make the water turn black~idiot bastard son"など印象的な曲が並ぶ。最後は現代音楽的なサウンドでカフカ『流刑地にて』を音楽化した不気味なテープコラージュ作品で終わる。

初CD化に際してリズム隊などがアーサー・バーローとチャド・ワッカーマンのテクニカルな演奏に差し替えられていましたが、元のマザーズの演奏を聴いても、演奏自体に別に問題は感じられず、どう聞いても改悪なのですが、差し替えの理由は、謎。

エリック・クラプトンも語りで参加、ジャケ右端のジミ・ヘンドリックスも、どうやら本人らしい。彼らとのほほえましいエピソードがザッパ自伝に。


Absolutely Free/Zappa Records
¥1,823
Amazon.co.jp
We’re Only in It for the Money/Zappa Records
¥1,869
Amazon.co.jp
全てのアルバムを聞いた訳ではないのですが、私的なメモとして。

●Freak Out!(1966)
「ロックの歴史的名盤」とされる1stアルバムは、いきなり2枚組LP。
このアルバムだけがやけに有名なのは、なんか不思議。
このアルバムにおける1966年における同時代文化への批評は必ずしも21世紀初頭においてわかりやすくないと思うから。

だいたい(特にロック以後の)音楽は大量生産の商品に他ならず、音楽を巡る言説もまた商品である、という事実を踏まえれば、「ロックの名盤」とか「ロックの名曲」というのはうさんくさい言葉だと思います。「ジャンル名」だってレコード会社やマスコミが作ったもんだし、「名作という概念にはある歴史観が前提されるが、どういう歴史観に基づいて言ってるのですか?」などという疑念が湧いてきますが、それはともかく、まあ、なんとも胸が熱くなる作品ではあります。

メンバーはザッパ(g,vo)、レイ・コリンズ(vo)、エリオット・イングバー(g)、ロイ・エストラーダ(b)、「バンドのインディアン」のジミー・カール・ブラック(dr)、他にスタジオ・ミュージシャンによるオーケストラなど。

R&B(「ロック」じゃない、厳密に言えば)を基調に、ひねった和声、オーケストラやノイズ、ポリリズム、インプロヴィゼーションをぶちこんだ奇妙なサウンド。歌詞の面では「『偉大な社会』の残骸の下にあるものを、恐れずに語るフリークスども!」とぶちあげる"Hungry Freaks,Daddy!"など、ストレートなメッセージが印象的。

ザッパ音楽のトレードマークになるマリンバをフィーチャーした童謡のような"Wowie Zowie"、ラヴソングへの皮肉だとか言うザッパ先生の説明が言い訳臭く感じるバラード"You didn't try to call me"などキャッチーな曲。"Trouble Everyday"は1965年の人種差別に対するワッツ暴動について歌ったナンバー。

アナログD面では、人の会話や奇声を音楽の一部として使う手法でフリーキーな世界を展開。

「プログレッシブ・ロック」などへの影響は明白ですが、歴史性よりも、ザッパの特異性を示しているアルバムであり、つまるところ、彼の無数の傑作の一つでしかないのではないでしょうか。

エドガー・ヴァレーズとR&B、ミンガスやドルフィーなどのプログレッシブなジャズを愛し、図書館で作曲を独学した変な野良インテリと、彼が率いるローカルR&Bバンドだった変なおっさんたちによる前衛R&Bオーケストラ作品は、66年当時のティーンエイジ・ポップ・ロックと、おそろしくかけ離れていました。

フリーク・アウト/ビデオアーツ・ミュージック
¥2,548
Amazon.co.jp
今日、「ツワナとソトのヴォーカル・ミュージック-ボツワナ、南アフリカ、レント1951、’57、’59」(日本盤はアオラ・コーポレーション)というCDを買ってきて聴いていた。したら、5拍子とか7拍子の曲がありました。今まで聴いたアフリカの民族音楽やアフロポップは、たいてい2拍子系と3拍子系のポリリズムだったので、びっくりです。

このCDはヒュー・トレイシーHugh Tracyという50年代にアフリカの民族音楽のフィールド・レコーディングをしまくり貴重な記録を残しまくった人のコレクション・シリーズの一枚で、タイトル通りアフリカの南の方の音楽を集めた巻。

トラック1~18はボツワナのツワナ人たちの音楽(ボツワナ=ツワナ人の土地、という意味)。老若男女の合唱曲が中心で和める。その中にリードパイプreed pipeという楽器によるアンサンブルの曲Majoneというのがあって、これは4+6/8、10拍子の曲。
それから12曲目の女性による雨乞いの歌(rain song)、手拍子の周期が謎で数えてみたら、これは7拍子。

17曲目の女性の井戸端会議の歌、打楽器代わりのバケツのグルーヴ感がすごくて、お気に入り。
トラック19~24のソトの人々の音楽では、マウス・ボウmouth bowという口を共鳴器にする楽器で、ディジェリドゥを甲高くしたような、シンセサイザーみたいなスゴい音が聞ける。
アフリカの民族音楽の合唱って、どんなリズムでも全員、縦の線がビシっとあってるのがスゴい。

ツワナとソトのヴォーカル・ミュージック-ボツワナ、南アフリカ、レント1951、’57、’59/(ワールド・ミュージック)
¥2,940
Amazon.co.jp