もはや時効だが。
学生の頃、ドイツ語のテスト前、我が山仲間のナカムラが私の下宿を訪ねてきた。
一緒に勉強しようというのかと思ったら
「ウォークマンを貸してくれ」
という話。
なんに使うのかと尋ねたら
「テキストのテスト範囲をすべて日本語訳してカセットテープに録音してカンニングする」
と言う。
「再生・ストップボタンを手元で操作できる小さなリモコンを作る」
「イヤホンは首元から耳に入れる」
「見えないように髪も伸ばした」
リモコン作るって…さすがは工学部だな。
それにしてもずいぶんボサボサの髪だと思ったらそういうことか…
用意周到なことだ。
バレないことを祈りつつ、半分バレることも期待しながらウォークマンを貸した。
数日後。
ナカムラがウォークマンを返しにやってきた。
「どうだった?」
「ダメだった…」
「バレたのか?」
「いや…」
「どうした?」
「4問あって全部録音した範囲だった」
「バッチリじゃないか!」
「いや、1問しかできなかった」
「どういうことだ?」
「1問だけ日本語訳を書いたところで終わった…」
テキストの一部が出題されたのだが、日本語訳は余計な部分も録音していたため、聴いているうちに時間切れになったのだとか。
アホというかマヌケやな…
しかしナカムラは懲りない男だ。
「次は早送りボタンのついたリモコンを作る!」
そう言って帰っていったが、当然そのドイツ語は不合格。
さて、この程度なら昭和の笑い話だが、デジタル時代のカンニングは手がこんでいる。
自力で日本語訳を録音したナカムラは努力家とも言えるが、こっちの方はより賢い。
東大生を騙してその頭脳だけを活用した。
仕込んだカメラから問題の画像をスカイプで送り、返信された画像をGoogleグラスみたいなもので目視したのだろうか。
市販されているモノを用意すれば私にだってできるだろう。
似たような手法は赤い国あたりでは当たり前にやられていることらしいが、ついに日本もあんな国の民度になったということか。
嘆かわしい。
おそらく犯人は捕まるだろうが、再発防止策は難しい。
よく言われることだろうが、
そのアタマを正しく使えよ。
ということだ。
なお、私のプロファイリングでは、犯人は「高2女子」ではなく「都内に住む一浪の男子」。