Sasa Sestic is 『THE COFFEE MAN』 | BAR14Nの憂鬱なラテアート

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ササ・セスティックがワールド・バリスタ・チャンピオンになるまでのドキュメンタリー映画『THE COFFEE MAN』の上映が、10月26日、ユナイテッド・シネマ豊洲で行われた。コーヒーをテーマにした映画として、抜群に面白い。ちなみに、この上映が、ジャパン・プレミア。

 

映画は、ササ・セスティックの生い立ちから、バリスタのチャンピオンになるまでを描いている。ハンドボール選手としての栄光と挫折、そこからコーヒー業界に入り、生産者との関わりを作ったり、バリスタとして頂点に登りつめたり。

映画のクライマックスのバリスタ・チャンピオンシップは、コーヒー関係者ならずとも、ハラハラし、興奮するものになっている。選手は、自分を追い詰める。追い詰めて、追い詰めて、そこから何かが見えてくるんだろうか。

 

ぼくは、ある一人の女性を思い出す。ジャパン・バリスタ・チャンピオンシップの予選で、ぼくは、たまたま次の競技者としての待ち席の近くに観客として座っていた。狭い会場なので、通り道を挟んで、すぐ隣。彼女は、すっごくブツブツとプレゼンの内容を復唱していた。それは、何かに取り憑かれているかのようでもあり、たった10分(予選は10分の競技時間)に全てを捧げる意気込みを感じた。ぼくが彼女を特別なバリスタに思い、好きになったのは、それがきっかけ。今では彼女は世界的に有名なバリスタになっている。

 

ただの「才能」というのでは、トップに立つ者のことは説明できない。ササ・セスティックは、ハンドボール選手としての才能があったかもしれない、そしてバリスタとしての才能もあったのかもしれない。けど、才能だけじゃない、トップに立つために必要な、どんな業界であっても共通のものが、きっとあるんじゃないだろうか。コーヒーの美味しさに目覚め、突如として生産国に行き、突拍子もないことに、農園を買う。そのエネルギーって何なんだろう。そのヒントがこの映画にはある。

 

たった一人の力では、チャンピオンになれないっていうのが、映画を通して伝わってくる。世界大会で、6位から順に名前が発表される時、ササ以外の他の選手の名前が読み上げられるのに喜ぶのは、正直なところどうかなとも思うけど、でも、そういうものだよね。世界大会の舞台、シアトルに行った彼らは、一つのチームであり、家族みたいなもので、一心同体。彼らの、喜ぶ姿に、ぼくは感動した。例え大きな失敗をしてしまったとしても、また苦しい日々を続ければ、その失敗を補って余りある喜びがある。

 

 

井崎くん、そしてコーディネートしてくれたSoniaさん、関係者の方々、上映の機会を作ってくれて、ありがとうございます。