フレンチプレス再考 -- コーヒーはもっと甘い、かも。 | BAR14Nの憂鬱なラテアート

BAR14Nの憂鬱なラテアート

エスプレッソやラテアート、コーヒーの話

フレンチプレスは、粗く挽いたコーヒー粉をお湯に4分間浸けておいて、プレスして飲むもの。
とてもシンプルな抽出器具なのだけど、抽出方法は、そんなシンプルな中にも多々ある。
まず、ぼくが一番参考にしたのは、James HoffmannのFrench Press Technique(LINK).
粉を粗く挽いて、コーヒーは1リットルのお湯に対して75g使う。ぼくは64g/Lくらいなので、結構多め。そして、粉が多いのとともに、ブレイク(表面のコーヒー粉を崩して底に沈める)してアクを取る方法という特徴がある。これは、たまにやっている人がいるのだけど、アクを取ることで、クリーンカップを上げるという方法。「クリーンカップ」というのは、コーヒーの評価基準にもなっていて、コーヒーのきれいさ。その液体に雑味を感じていたら、クリーンカップが落ちていると言える。
そして、次に、NOZY COFFEEの入れ方(LINK)。 中粗挽きで18gのコーヒー豆を使う。この18gに対し、ボダムの0.35Lを使っているので、入る湯量は280gくらいだから、64g/Lになる。
基本的に、ぼくの今のフレンチプレスでの入れ方は、NOZY COFFEEで教えてもらったもの。おそらく、ぼくの家でフレンチプレス用に挽いているコーヒーは、NOZYのいう中粗よりも粗い。
↓これくらいの粗さです。
photo:01

丸山珈琲の入れ方(LINK)では、16gのコーヒー豆を中挽きにしている。これは、1リットルに直すと、57g/Lになる。ちなみに、ぼくもたまに16gで抽出することがあって、その時は若干細かく挽くことにしている。それでも、中粗挽きと言っていいくらい。
経験上、細かく挽いて抽出すると、酸が立ちやすく、フレーバーも際立つ印象。ただ、とんがった印象のある抽出になりがち。
粗く挽いて使うコーヒー粉を多くすると、その分マウスフィールと呼ばれる、口当たりや舌触りの印象が良くなる。そして、甘さも増す印象。

ただ、James HoffmannとNicholas Choの2つの記事を読むと、もしかすると4分間の抽出は、実は抽出不足だったんじゃないかって思うようになった。
Cupping Vs French Press
http://www.jimseven.com/2010/11/04/cupping-vs-french-press/
Making a delicious french press redux. For nerds.
https://plus.google.com/106600757771848447744/posts/TxoVir91SoF

今までフレンチプレスでは、中挽きにしたりなど、細かいグラインドセッティングにしたり、抽出時間を4分より短くしてというのはやってみたことがあった。でも、4分を超える抽出ってしたことがないなと思って、以下の飲み比べを行っていった。
あくまで飲み比べであって、科学的な検証とはほど遠い。この飲み比べは5ラウンドやるけれども、違うコーヒーで行っている。ただ、同じラウンドで使うコーヒーは同じにすることで、「質」の部分よりも「量」に着目することはできていると思う。

photo:02

ROUND1
そういうことで、まずは、いつものフレンチプレスの入れ方とカッピング式での飲み比べ。
使ったコーヒーは、丸山珈琲のホンジュラス・マリア・アルカディア。
(A)通常の入れ方。4分後にプランジャーをプレス。
(B)カッピング式。4分後にブレイクし、アクを取る。6分後にプランジャーをプレス。
(A)(B)とも、フレンチプレスのふた(プランジャー)は、取り外したままの状態にしておいた。この取り外したままというのは、ROUND5まで全て同様。

結果は、カッピング式のほうが、後味に感じる甘さが増していた。
フレーバーや酸の質といった点は、ほぼ同じ。舌触りも似たようなものだった。

ROUND2

Unirのホンジュラス・エルサウセで飲み比べ。
(A)6分後にプレス。
(B)4分後にブレイク、アク取り、6分後にプレス。

(A)と(B)を最初に飲んだ印象は、(A)のほうが濃いということ。
(A)は少し雑味を感じることから、過抽出になっているのかもしれないが、悪い印象はそれほど強くなかった。
(B)のほうは、舌の上に軽くのる印象で、明るい酸の印象が伝わってくる。
ブレイクとアクを取ったことで、抽出がある程度止まっていることが分かる。
フレーバーは、(A)(B)とも同じように出ていたと言って良いと思う。

ROUND3
NOZY COFFEEのエチオピア・イルガチェフェ・コチェレで飲み比べ。
(A)6分後にブレイク、アク取り、プレス
(B)4分後にブレイク、アク取り、6分後にプレス。

中煎り程度で、味の強さは同じ程度だが、
(A)は若干抽出されすぎている。後味に雑味を感じた。
(B)のほうが舌触りがよく、シルキーな印象。クリーンで甘さを感じやすい。
アクを取ることで雑味が軽減されるかなと少しは思ったけど、そんなことはなかった。
やはり、過抽出気味な(A)のほうは、クリーンカップで(B)に劣る。
過抽出な場合は、アクを取っても過抽出な印象なのでしょう。

ROUND4
FRESCO COFFEE ROASTERのエルサルバドル・エル・マドリアードで飲み比べ。
エル・マドリアードは、先日行われたTOKYO PAPER DRIP JAMでの課題豆となったコーヒーだけど、こちらは課題豆よりも深くローストされているもの。
(A)4分後にブレイク、6分後にアク取り、プレス。
(B)4分後にブレイク、アク取り、6分後にプレス。

双方に明確な差は出ていないように思えた。
つまり、ここで分かるのは、ブレイクすると抽出が遅くなるということ。
ビターチョコやドライフルーツの印象のあるコーヒーでした。

ROUND5
Cafe Obscuraのグアテマラ・ラ・ホヤ農園で飲み比べ。
(A)4分後にプレス
(B)4分30秒後にプレス

(A)は、最初の頃の印象は良かった。キャラメルやビターチョコの印象を持ちつつ、マスカットのような爽やかさがある。
(B)は、最初の印象はあまり良くなく、ビターな印象や革の印象が若干あった。けれども、冷めてくると、印象が良くなった。後味に甘さが強く感じられて、奥行きを感じられた。(A)よりも、明らかに冷めたときの印象は良くなっていた。

結果

ROUND5の結果から、ぼくのいつもの使うコーヒー豆の量と湯量の関係では、4分を超えると、過抽出の印象が出てくるようだ。けれども、甘さは4分を超えた時のほうが強く感じている。
一方で、4分後にブレイクして、そのまま置いておいても、過抽出な印象にすぐはならない。6分経っても、そんな印象はなかった。でも、抽出は確実に進んでおり、コーヒーの甘さが増している。

えぐみみたいなものって、ブレイクしてコーヒー粉を底に落としてしまうと、それほど出なくなるんじゃないだろうか。それには、低下している湯温(注湯時に96℃だったものが6分後には82℃くらいだった)の影響や、重たいものが沈み、底のほうでのみコーヒー濃度が高い状態になることで、抽出がゆっくりになるというのが、仮定としては考えられるけど、あくまで仮定のみで科学的な検証は行わない。
ただ、甘さは、周囲のコーヒー濃度の高さに影響されずに、そして、高くはない湯温でも時間をかけることで出てくるのかな、なんて思った。

コーヒー豆の挽き目は全て同じ設定にしたので、挽き目が細かいとまた違った甘さの出方になるかもしれないけど、今のところそれについては、気にしない。
そして、4分後にブレイクして6分後にプレスする方法は、とりたてておすすめもしません。
4分後にプレス。単純なほうが良い。けど、買ったコーヒーがピンと来ないなっていうとき、いつもの抽出時間でブレイクして、そこから少し置いておく方法をとると、ピンと来ることがあるかもしれません。