映画「アリランラプソディ」を見る。
金聖雄(キムソンウン)監督の最新作。
川崎の桜本のハルモニ(韓国語でおばあさん)の日常を追ったドキュメンタリーだ。フライヤーに曰く、
「もう死ぬのは怖くない」
パワフルに生きた
ハルモニたちの日々が
今、ささやかに弾ける!
僕のへたくそな説明よりもトレーラーをご覧いただいた方がいいだろう。
川崎・桜本に集うハルモニたちへのインタビューを軸に映画は進む。なぜここに流れ着いてきたのか。どんな人生を歩んできたのか。そして今、何を考えているのか。
戦中は無理やり「日本人」に組み入れられ戦後は逆に「外国人」として弾きだされ差別され…。そして働きづめの人生の最終コーナーで得た自己を表現する楽しみと自己を肯定する喜び。その笑顔の逞しくキュートな事!!
その辛苦は想像を絶するものだったろう。普通のドキュメンタリーなら泣かせどころがたくさん。でも金監督はそう簡単には泣かせてくれない。泣いてカタルシスを得ることを許してくれない。必要以上の説明を加えず淡々とすすめる。泣きそうになったところでハルモニたちに笑かされてしまう。
ハルモニたちの沖縄への旅にもカメラは同行する。ハルモニとオバア。会った瞬間にわかりあえる、共に戦争と差別に翻弄された者同士の邂逅はまるで白日夢のように美しい。
在日二世である金監督のインタビューがいい。優しい言葉で穏やかに寄り添い、ハルモニたちに対する愛と尊敬がにじみ出る。その背景には一世である母の人生を聞かぬまま見送ってしまった後悔があったようだった。
ハルモニたちが醸し出したそんな泣き笑いの空間に後半、激震が走る。ここ数年の戦争への回帰とヘイトの嵐だ。おぞましいヘイトデモの様子も映し出される。悪意むき出しの乱暴な言葉で暴力をほのめかし威圧する。映像と音声に接しただけの僕ですら怖い。ハルモニたちがどんなに怖く辛かったことか。警官隊に守られて醜い憎悪をまき散らすヘイタ―達の恥ずかしい姿。ついでに言うならこういう者どもにそそのかされて歴史を捏造してまで群馬の追悼碑を破砕した者どもも同様に恥ずかしい。世の中は確実に劣化している。
でもハルモニたちはそんなものには負けやしない、もちろん。くぐってきた修羅場の数が違う。ニコニコしながらも一歩も退かない。その様は場面転換の際にたびたび映し出されるタンポポのよう。ちょっとやそっと踏まれたからと言ってちぎれやしないし枯れやしない。花が散った後は綿毛となってどこかに飛んでいき、飛んでいった先でまた花を咲かせる。
125分と決して短くない映画だがあっという間だった。ぜひ多くの人に見て欲しいし、僕ももう一回見たい。そしてもう一回見たらきっとさらにもう一回見たくなるだろう。
間もなく公開。
東京 K's cinema 2月17日(土)〜 3月8日(金)
東京 シネマ・チュプキ・タバタ 3月14日(木)〜 3月31日(日)19、20、27は休映
神奈川 横浜シネマリン 3月23日(土)〜 4月5日(金)
京都 京都シネマ 3月29日(金)〜
大阪 第七藝術劇場 3月30日(土)〜
兵庫 元町映画館 4月6日(土)〜
詳細は公式サイトへ
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今回はマスコミ向け試写会に潜り込んで見せていただいた。渋谷円山町の映画美学校試写室にて。
ほぉ、メディア向け試写会だったのか。
公式X(ツイッター)より写真を拝借。中央のひときわ白い頭が僕。
ステージで挨拶しているのが金聖雄監督。みんなが拍手しているのがわかると思う。
8年前には当ビブリオで上映会をしてくださった。東京で暮らすアイヌの生活を追った「チャランケ」という作品。この日はビブリオの歴史に残る大入りだった。
冤罪をテーマにした作品も多く、常に気になる監督だ。
この「アリランラプソディ」の話は何年も前から聞いていて、5年前の「花はんめ」のリバイバル上映の際には「アリランラプソディ」のモチーフとなる映像の一部を「その後の花はんめ」として見せていただいた。20年前のハルモニたちを描いたデビュー作「花はんめ」のトレーラーは下のサムネイルをクリック。
続いて「さくらもとプロジェクト」なるフライヤーを送っていただき、ずっとビブリオの壁に貼っていたので見覚えのあるお客様もあるかもしれない。そのプロジェクトはこのたび、映画「アリランラプソディ」として結実した。
お勧めできる映画です。ぜひご覧ください。僕もまたハルモニたちの笑顔に会いに行きたいと思っています。
・・・・・もうすぐ開催・・・・・・・
2月8日(木)~2月18日(日)
西村繁男絵本原画展「おばけでんしゃ」(文 内田麟太郎)
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3月23日(土)~3月24日(日)
「YO-EN唄会 黄昏に恋して 2デイズ」vol.19
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・・・・・店外で開催(協力企画)・・・・・・・
3月16日(土) 町田市:純手打ちうどん 町田タロー庵にて開催
YO-ENワンマンライブ「八木重吉を唄う」
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3月19日(火) 阿佐ヶ谷「よるのひるね」にて開催
「よるのひるね YO-ENワンマンライブ」
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・・・・・・発売中・・・・・・・・・
国立名物「俳画カレンダー」令和六年版
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通販サイト「ギャラリービブリオBASE店」でも販売してます
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当ビブリオが「美術協力」したミュージックビデオ「私の孤独」「わたしはわるい人間だもの」、YOUTUBEで無料公開中です。
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国立駅前。展示、ワークショップ会議にご活用ください。レンタルスペース、貸会議室も。
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中の人はこんな人です。
↑↑久保新二&しのはら実加「下町禁足地」にゲスト出演。 詳細は画像をクリック!