【昨日日記】

画廊「煌翔(コウショ―)」を辞した後は駅に戻らずそのまま南下し青梅街道に出て次の目的地へ。信号待ちをしていたら若い女性に声をかけられた。

 

 

 

「すずらん通りってどちらでしょう」

 

 

 

…。「隅田川」に行くんですか?

 

 

「はい、そうなんです」


僕もです。ご一緒しましょう。

 

 

杉並区南阿佐ヶ谷から台東区と墨田区の境にある隅田川は一番近いと思われる両国橋まで約15キロの緩やかな下り坂、歩けないこともない(いや、歩けない)。

 

 

そんなわけで、僕と彼女の共通の目的地は「アートスペース・プロット」。そちらで上演中の「隅田川」。「アートスペース・プロット」があるのが「すずらん通り」なのだ。なぜ「すずらん通り」と聞いただけで「隅田川」とわかったかというとその女性がいかにも演劇好きな風情だったというのもあるし、「すずらん通り」というのが本当に地味な商店街なのだ。目印は昼の部に来ていた浅草21世紀の看板女優・しのはら実加さんがFacebookに上げておられた写真に写っていた立派なお花。



(写真・しのはら実加さん)

 

 

「アートスペース・プロット」に入ると李麗仙さんの肖像画。



(写真・しのはら実加さん)



受付に制作の森島朋美さん。メール予約していたチケットをいただき客席へ。開場して間もなかったが大方埋まっていた。運よくベンチ席でなく椅子席を確保。早めに来てよかった。

 

 

 

「隅田川」という題名を見て古典芸能好きな人はぴんと来ると思うけど能の「隅田川」をモチーフにしたもの。いわゆる女物狂もの。人買いに子どもを攫われて精神を壊し京の都から武蔵の国の隅田川まで子を探しきてさらには隅田川を渡ろうとしての船頭とのやり取りが主要モチーフ。

 

 

 

 

このお芝居は能楽の「隅田川」をモチーフに故・李麗仙さんが脚本を書き、自ら演じようと準備を進めていたもの。李麗仙さんが亡くなり上演はならなかったその遺作を長年の盟友である山崎哲さんの演出、森島朋美さんの制作でついに上演されることなった。それがこの興行なのだ。

 

 

 

演出の山崎哲さんは約30年前、書評番組の司会をされていた。その番組のスポンサーが僕の当時の勤務先の会社で、担当部署が僕の所属だったのがご縁の始まり。僕の前任者が如月小春さんとの対談を組み、僕は作家の藤本ひとみさんとの対談を組んだ。って古い話だなぁ。

 

 

もともとは李麗仙さんが演じようとしていた「シテ」にあたる狂女は風祭ゆきさん。日活ロマンポルノ全盛期を支えた大スターであるが、それ以前、僕が大好きな映画・新藤兼人監督の「竹山ひとり旅」に盲目の美少女役で出演されている。当時、中学生だった僕は「なんて美しい人だ」と胸を焦がしたものだ。「ワキ」の船頭は三上寛さん。同じころ近所に住んでおられてよくお見掛けしたし、久保新二さんの盟友であり近年、何かとお会いする機会も多い方。PVはこれまた旧知の映画監督・才谷遼さんが作った。

 

 

 

 

才谷さんは映画監督であるとともに、映画館「ラピュタ阿佐ヶ谷」「Morc」芝居小屋「ザムザ」館主で、出版社「ふゅーじょんぷろだくと」社長。ラピュタができるずっと前、同社の雑誌「COMICBOX」の「つげ義春特集」の座談会企画に押しかけ参入したのが始まりだったかな。前の事務所で才谷さんと鉄道模型で遊んでいたら突然甚平姿の永島慎二さんが来たこともあった。

 

 

と、ここまで囲まれたら見ないという選択肢はないでしょう。

 

 

開幕。岩佐鶴丈さんの薩摩琵琶が響く。

 

 

(写真=森島朋美さんのフェイスブックから)

 

 

攫われた子を思うあまりに物狂いとなってしまった母を演じる風祭さんの凄絶なまでの美貌と、ひとつひとつの所作の美しさ。そしてそれを際立だせる舞台美術も秀逸。

 

 


(写真=森島朋美さんのフェイスブックから)


船頭役の三上さんの盤石の存在感。武蔵くんだりの船頭で粗野かと思いきや、言葉の一つ一つに重みがあり教養を感じさせる。もちろん善良なだけでなく現実的でもあるのだが慈愛に満ちている。僕はずーっと昔に最初の方だけ読んだ『ジャン・クリストフ』の行商人・ゴットフリートをすこしだけ思い出した。全然違うかもしれない。違ってたらごめんなさい。

 

 

(写真=森島朋美さんのフェイスブックから)

 

 

腹にずしんと響く読経と太鼓の音も現実を忘れさせ敬虔な気持ちにさせられたし、夕焼け色の照明とスモークも身体を浮き立たせた。

 

 

 

基本的には悲劇なんだけどところどころにちりばめたユーモアが救いになっていた、気がする。根本豊さんの西行のコメディリリーフぶりが実にパワフルで面白かった。

 

 

 

カーテンコール。鳴りやまぬ拍手。美しい演劇だった。僕はお芝居はめったに見ないのだけど見に行ってよかった。 関係者の皆さん、お疲れさまでした。


今日7月19日が千秋楽。きっと今頃はいいお酒を飲んでおられることと思う。きっとそこには李麗仙さんもいるはずだ。

 

 

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