◆「もしトラ」に備え、麻生氏がトランプ氏と会談
自民党の麻生太郎副総裁は23日午後(日本時間24日朝)、米ニューヨーク市中心部の「トランプタワー」でトランプ前米大統領と会談した。
先般、岸田文雄首相が国賓待遇のもてなしを受けた訪米から、2週間しか経っていない状況で、現職のバイデン政権側から「二股外交」と受け取られかねないというリスクを懸念する声が強まっている。
アメリカ議会上院では、ウクライナへの軍事支援再開へ向けて、緊急予算案が可決した。滞っていた軍事支援が再開されることで、劣勢に立たされていたウクライナに武器・弾薬などが供与され、戦局にも影響が出そうだ。
◆大手自動車メーカーは、ロシアから撤退で…
ロシアによるウクライナ侵攻から2年以上が経過しているが、この間に日本の大手自動車メーカーでは当該ロシアからの工場撤退が相次いだ。
侵攻から半年あまりが経過した2022年9月、トヨタ自動車はサンクトペテルブルクにある工場を閉鎖し、ロシアでの生産から撤退すると発表し、その後同工場はロシア産業貿易省傘下にある「自動車・エンジン中央科学研究所」へ譲渡され、国有化された。
その翌月には日産自動車もロシア事業からの撤退を表明し、現地の子会社であるロシア日産自動車製造会社の全株式を自動車・エンジン中央科学研究所に1ユーロで譲渡する方針を明らかにした。その後、同年11月に全株式の売却が完了し、日産のサンクトペテルブルク工場は自動車・エンジン中央科学研究所への譲渡後、ロシアの乗用車最大手アフトワズが2022年末から自動車生産をこの工場で開始した。
マツダも11月、ロシアからの撤退を表明し、ロシアで製造を手がける大手自動車メーカー「ソラーズ」との合弁会社の株式を同社に1ユーロで譲渡することを明らかにし、いすゞ自動車も2023年7月、トラックの生産や販売などのロシア事業からの撤退を発表し、子会社の株式を現地の自動車大手ソラーズに譲渡したと発表した。
大手自動車メーカーの間で生じたドミノ現象的な脱ロシアの背景には、この政治的緊張が長期に渉ることが避けられないとの判断があったことは想像に難くない。
そして、その判断どおり、現在でもウクライナ戦争は長期化が間違いない状況なのだ。3月の大統領選挙で5選を果たしたプーチン大統領は最近、追加で15万人を動員する大統領令に署名し、今後ウクライナでの攻勢をいっそう強めていく構えだ。
一方、ウクライナ側の劣勢は顕著で、ゼレンスキー大統領は米国からの軍事支援が停止されれば戦争に負けると繰り返し主張し、両国が置かれる状況は全く異なる。
◆安全保障の不確実性
ウクライナがロシアによる侵攻を許したひとつの背景に、ウクライナが北大西洋条約機構(NATO)に加盟していないことがある。
NATOはその条約第5条で1加盟国への攻撃は全加盟国への攻撃とみなすと規定し、要は集団的自衛権を認める集団防衛体制となっており、仮にウクライナがNATOに加盟していれば、ロシアはNATO加盟31か国(当時のNATO加盟国数にウクライナが加盟していたとして)を敵に回すことになるので、プーチン大統領も侵攻という決断を下していなかった可能性が高い。
ウクライナ周辺には同じく旧ソ連圏を構成してきたバルト3国があるが、リトアニアもエストニアもラトビアもNATOに加盟しているが、ウクライナのように未加盟となっていれば侵攻の対象になっていた可能性は排除できない。スウェーデンとフィンランドがNATO加盟を急いだのも、それによって自国の安全保障を担保しようとしたからだろう。
しかし、NATOの傘下に入ればロシアによる脅威から完全に身を守れるかといえば(海外進出企業の観点でいえば、ロシアと距離的に遠くないNATO諸国であれば社員は安全に仕事できるか)、最近不穏な空気が漂う。
米国では今秋に大統領選が行われるが、トランプ氏は2月に、「NATO加盟国が軍事費を適切に負担しなければ、ロシアからの攻撃があっても米国は支援せず、好きにやるようロシアにけしかける」などと発言し、大きな物議を交わした。
これに警戒感を抱いたのか、その後フランスのマクロン大統領は、「ウクライナ戦争でロシアを打倒することは欧州の安全保障にとって不可欠であり、西側諸国の地上部隊をウクライナへ派遣することで合意はないものの、その可能性を現時点で排除するべきではない」と一歩踏み込んだ発言をした。
これも大きな物議を醸し出すことになり、ドイツのショルツ首相やNATOのストルテンベルグ事務総長らは、NATO加盟国の兵士が戦場に派遣されることはないとマクロン大統領の発言を強く否定したが、オランダやリトアニアなど一部のNATO加盟国からはマクロン発言に同調するような言及もある。
その後、マクロン大統領は3月にも、ロシアがウクライナに勝てば次の標的は欧州だと警告する発言もしている。
◆NATOと揺れる欧州
仮に大統領選挙でトランプ氏が勝利すれば、NATO内での混乱や分断が先鋭化する恐れがある。前述のとおり、NATOが集団防衛体制であることがロシアに対する大きな抑止力となってきたが、共同で対処するものの、どんな対抗措置を具体的に取るかは結局のところ最後は各国政府の判断であり、自国の軍隊を最前線に送ることはマストではない。
「もしトラ」といわれるトランプ氏が大統領になった場合に、こういったNATOの一体性にほころびが生じ始め、混乱や分断が助長されNATO自体が「形骸化」してしまうリスクが考えられる。
◆トランプ当選で、ほくそ笑むプーチン
この混乱こそがプーチン大統領の狙いであり、NATOの形骸化はロシアを大きく利することになる。それを警戒する欧州諸国とロシアとの軍事的緊張が高まることになるだろう。
欧州、特にロシアと距離的に近い東欧諸国に進出する日本企業としては、このリスクを長期的な視野で捉えておく必要がある。今すぐロシアの脅威がウクライナ周辺の欧州諸国に拡大するわけではない。しかし、プーチン大統領がどこまで拡大するかは未知数であり、NATOの形骸化により欧州とロシアとの間で軍事的緊張が高まるリスクは排除できない。
大手自動車メーカーだけでなく日本の大手企業もポーランドやチェコ、フィンランドなどに進出したり、新たな開拓先と選定したりする動きがある。地理的要因、長期的視野でウクライナ戦争を捉える必要があるのだろう。
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【 「日産」ロシアでの生産・販売事業から撤退を発表 の動画はこちら 】
https://www.youtube.com/watch?v=snh03xSqUM0
【 西側企業の撤退で、ロシアの新車輸入は、ほぼ中国車に! の動画はこちら 】
https://www.youtube.com/watch?v=NP5J_ik3J_U
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