◆AMG史上最速のロードゴーイングF1
メルセデスAMGは、F1にインスパイアされた新型ハイパーカー「ワン(ONE)」を公開しました。今年後半にはデリバリーを開始する予定という。
2017年のフランクフルト・モーターショーで発表されたコンセプト「プロジェクト・ワン」をもとに開発。F1向けに開発された1.6L V6エンジンに4基の電気モーターを組み合わせ、合計出力1063psというAMG史上最もパワフルな市販モデルとなっている。
最高速度は352km/hに制限されているが、1997年のメルセデス・ベンツCLK GTRの344km/hを上回っており、同社史上最速の市販モデルということだ。新型AMG「ワン」の開発には、メルセデスの市販車部門と英国に拠点を置くF1チーム、そしてAMGハイパフォーマンス・パワートレインズ部門が密接に関わっている。
予定生産台数は275台以下、販売価格は275万ドル(約3億5600万円)からという。当初は2019年の発売を予定していたが、F1向けエンジンの排ガス規制や高度なエアロダイナミクス開発が難航したそうだ。メルセデス・ベンツのオーラ・ケレニウスCEOは最近、「会議の議事録を確認する必要がありますが、(ワンの)開発を承認したとき、わたし達はきっと酔っぱらっていたのでしょう」と、冗談交じりに話す。
◆高度なエアロダイナミクス設計
車体のベースとなるのは、スチール製ロールバーを内蔵したカーボンファイバー製のモノコック。このモノコックが、ハイブリッド・パワートレイン用の大型リアサブフレーム構造と、カーボンファイバーおよびチタン製のリアシャシーを支えている。
スタイリングは、2017年の開発コンセプトをほぼ忠実に踏襲している。しかし、5年間の開発期間の中で、さらに高い性能目標を達成するためにあらゆる面が刷新されたという。
カーボンファイバーと複合プラスチックを組み合わせたボディは、最大限のダウンフォースを発生させるために設計開発されたもので、フロントエンドの冷却ダクト、フロントフェンダー上部のルーバー、伸縮可能な2ピースのリアウィングなど、可動式エアロパーツも多数装備している。
走行中、エアロダイナミクスのレベルは3段階に調整できる。ダクトとルーバーを閉じ、リアウイングを格納した「ハイウェイ」、ダクトとルーバーを開き、リアウイングを伸ばした「レースマックス・ダウンフォース」、ダクトとルーバーを閉じ、リアウイングフラップを格納した「レースDRS(ドラッグリダクションシステム)」というモード設定が可能だ。
ノーズには大型ダクト、キャビンには弧を描くエアボックス、リアにはエンジンルームから熱気を排出する大型エクストラクターが装備され、デザイン的にも重要な役割を果たしている。
ホイールはセンターロック式で、フロント19インチ、リア20インチを採用。素材は鍛造アルミニウムが標準だが、オプションで鍛造マグネシウムも選択できる。タイヤは特注のミシュラン・パイロットスポーツ・カップ2R M01を装着する。
◆F1用エンジンに電気モーター4基搭載
縦置きに搭載されるV6エンジンは、メルセデスが8年連続でコンストラクターズタイトルを獲得したF1エンジンの改良型で、最高出力は574ps/9000rpm、レッドラインは1万1000rpmとなる。排ガス規制をクリアするため、電気加熱式触媒とガソリン微粒子フィルター、そしてチタン製のリアサイレンサーが採用される。
4基の電気モーターには、F1マシンの技術がふんだんに盛り込まれている。出力123psのモーターはターボチャージャーと電動コンプレッサーの間のシャフトに内蔵、163psのモーターはエンジン上に配置され、ドライブシャフトに接続されている。さらに163psのモーター2基がフロントアクスルに内蔵されている。
合計出力は1063psで、これまでで最もパワフルな市販モデルであるGTブラックシリーズよりも333ps高い。アストン マーティン・ヴァルキリーの1176psや、フェラーリSF90ストラダーレの1000psと近い数値となっている。
メルセデスAMGでは、「ドライブトレインの複雑な性質上、代表的な数値を示すことができない」とし、トルクについては公開していない。しかし、0-100km/hは加速2.9秒、0-200km/h加速7.0秒、0-300km/h加速15.6秒と謳っている。トランスミッションは、シフトパドル付きの新開発の7速自動AMTが採用されている。
セレクトできる走行モードは、「レースセーフ」、「レース」、「EV」、「インディビジュアル」、「レースプラス」、「ストラット2」という6種類で、最後の2つはサーキット走行用として用意されている。
レースセーフモードは、オンデマンドのハイブリッド駆動。レースモードでは、エンジンが常に作動し、バッテリーの充電に使用される。そして、EVはその名のとおり電気のみで走行するモードだ。
レースプラスモードでは、リアウイングを所定の角度で展開しダウンフォースを増加させるエアロ機能、サスペンションのローダウン、パワートレインの「スペシャル・パフォーマンス・マネージメント」を行う。
ストラット2(F1マシンの「ストラテジー2」モードに由来)は、エアロやサスペンションチューン、パワーマネジメントを最も過激なものとし、フルパワーを発揮する。
◆サーキット走行に特化したインテリア
もちろん足回りもレース仕様となっており、全輪が5リンク式のプッシュロッド・サスペンション、横置きダンパー、アジャスタブルストラット、セラミック製ボールベアリング(従来はスチール製)を採用している。また、電子制御トラクションコントロールシステムは、9段階以上のモード設定が可能という。
内包するインテリアもレース仕様で、合成皮革とカーボンファイバーのコンビネーション。薄型シートはモノコックのフロアに直接取り付けられており、ドライバーとパッセンジャーは非常に低い位置に座り、腰が足よりもやや低いレーシング・ドライブ姿勢になるそうだ。
F1スタイルのステアリングホイールには、シフトランプとドライビングモード、トラクションコントロール、リアウィングのコントローラーが装備され、エアバッグも内蔵されている。足元のペダルボックスにはドライバーが好みの設定ができるよう十分な調整幅が設けられた。
キャビン中央の収納スペースには、2つのUSB-Cポートが設置され、エアコンと電動ウィンドウも標準装備となる。また、デジタルバックミラーにより後方視界もしっかり確保されている。ただし、荷物用のトランクスペースはなく、小さな荷物であればシートの後ろとセンターコンソールの上に収納することができる。
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【 The ONE and Only – The New Mercedes-AMG ONE の動画はこちら 】
https://www.youtube.com/watch?v=Tm4rkRpoapw
【 Unveiling The New MERCEDES-AMG ONE Street-Legal F1 (YOUCAR) の動画はこちら 】
https://www.youtube.com/watch?v=T7BHU-W98q0