【鉱物言葉集】では

文学作品や、鉱物に関する著書、

音楽の歌詞などから集めた、

鉱物(石)にまつわる言葉をご紹介します。




『グリム ドイツ伝説集』より
(編著:グリム兄弟 訳:吉田孝夫)



ヴェントフーゼンの石



クヴェードリンブルク修道院領内に

あるヴェントフーゼンの村には、

はるかな昔、女子修道院があった。


後にレーゲンシュタイン伯の所有地

となり、その死後は何人かの領主が

移り変わっていった。


人びとが真実として語るところに

よれば、この土地には古き修道院時代から残るひとつの石があり、  

それはもしこの土地の所有者に

大きな災いが起こることを避けたい

なら、その石にはいつ何時も

手を触れてはならず、

また傷もつけないように、

そっと横たえておかねばならない

という代物であった。


ある時、歴代の領主たちの一人が

まったくの好奇心から、 

石を別の場所に持ち去らせたという。


するとその領主は、代償として

ありとあらゆる災厄に悩まされ、

とうとう石を元の場所に

戻させたのであった。



〜『グリム ドイツ伝説集』より〜




『ドイツ伝説集』は、

グリム兄弟が、ドイツ語が用いられた

実在の土地で紡がれた物語を集めたものです。


この著書は、

初版1816年『ドイツ伝説集』第1部と

初版1818年の第2部の全訳なので、

かなり分厚い本です。


この中に、

石にまつわる伝説もたくさんあります。

「石に変えられた小人」「嘘つき石」

「石に変じたパン」「死に際の石」等。

本当にこんなことが?と思いながら

興味深く読みました。


グリム兄弟はこのように言っています。

「伝説を蒐集するにあたり、わたしたちが

何よりも気を配った第1のことは、

忠実さと真実性である。」

(『グリム ドイツ伝説集』序文より)



ドイツ カッセル グリム兄弟像


ドイツ シュタイナウ グリム兄弟の家